『他喜力』を信じる迷惑な親戚。

 親戚に『他喜力』を信じる中年女性がいる。初めて聞くおかしな言葉なのでネットで調べてみたら『他人を喜ばすと幸運が押し寄せる!他喜力』という本に出てくる言葉で、本人はそれを信じて実行しているが、私的にはおぞましくもいやらしい題名の本であり読みたくもない。
 
 先日その迷惑女性が、私と利害関係のある親戚の仲立ちをしてきた。持ち込まれた話は私には到底飲み込める条件ではないのだが、その迷惑女性は「他人を喜ばせる事であなたにも幸せがくる。勿論あちらさんも喜んでいる。」と、熟年の私を説得しようとした。
 まあ、その迷惑女性も親戚なので粗末にもできないから丁重にお帰り願ったが、彼女の持ってきた話は先方にだけ『他喜力』が働き、先方には感謝されるだろう。だが、私からすれば悪意の提案にすぎない。
 きっと、この迷惑女性には利害関係で対立している関係には『他喜力』なぞ働かないのを理解できないのだろう。あるいは、誰かに感謝されると舞い上がってしまい、もう一方に迷惑をかける事など想像もできないほどハイな精神状態になってしまうのだろう。
(利害関係があっても『他喜力』が通じるなら中国に行って尖閣諸島問題を解決してこいと叫びたい)
 
 共産主義ソ連では『宗教は麻薬』と宗教を排斥した。この迷惑女性の信じる『他喜力』とはその人には麻薬か覚せい剤の様な物なのだろう。誰かに感謝されると迷惑をこうむる人のいる事が判らなくなってしまうのは脳科学でも説明できる。
 脳細胞には神経伝達物質を作る能力がある。ドーパミンを作り過ぎればハイになる。『他喜力』を信じて行動し、都合の良い方の人に感謝されると歓喜のループがドーパミンをドバドバ生産して、不都合な事実をマスクしてしまい『私はスゴイ』と酔ってしてしまうのだろう。
 
 結局、話に進展はなく、迷惑女性の言いふらす「内蔵助はワカランチン」という結果が残った。『他喜力』って悪口を言いふらす事なの。こういう時、宗教をやっている人だと「深く理解している人も、そうでない人もいます。人間を見ないで真理を見てください。」と言うものである。
 『他喜力』とは、AのグループではBの悪口を言い、BのグループではAの悪口を言う八方美人型の交際にともなう罪悪感を薄める魔法の言葉だと理解した私であった。
 人間、万人に良くする事はできなし、八方美人はやがて信用を失う。この迷惑な親戚の女性は『他喜力』よりも『信頼を得る交際術』(こんな本あるかな?)でも学ぶべきだ。