魔法の箱。

僕の家はマンションの6階です。
そこに、僕とお母さんとお父さんとお爺ちゃんがいます。
お爺ちゃんは田舎にいましたが、お婆ちゃんが死んだので僕の家に来ました。
お爺ちゃんは一番小さな部屋にいます。
そこに防音室を作ったので部屋はすごく狭くなりました。
僕は勇気を出してお爺ちゃんの部屋のドアを少し開けて言いました。

『お爺ちゃん!。いま何してる?。』「お茶を飲んでるよ。」
『僕も入っていい?。』「いいよ。隣に座りな。」
僕はおじいちゃんの大きなビーズクッションに足をバタバタさせて登りました。
 
「お茶を飲むかい。」『苦いからいらない。』
「お饅頭を食べるかい。」『お饅頭嫌い。でも羊羹は好き。』「羊羹は無いな~。」
「アレ、羊羹もアンコだよ。」『羊羹はモニョモニョしないから平気。』
「アハハ。判った。小豆の皮が駄目なんだな~。」『そう。モニョモニョして嫌い。』
「お茶は苦いし、お饅頭も嫌いとなると、飴はあったかな~。」『ニッキ飴嫌い。』
「じゃあ、何か欲しい物あるかい。」『エ~ト、お爺ちゃんの防音室みせて!。』
「エッ。それは駄目だよ。」『お爺ちゃん、欲しい物あるかって聞いたでしょ!。』
「誰にも見せたくないんだ。困ったな~。」『お菓子いらないから1回だけ見せて!。』
「中は狭いぞ~。」『僕、小さいから大丈夫。』
 
お爺ちゃんが先に防音室に入り、椅子に腰掛けてから僕を膝の上に乗せてくれました。
机の上の黒いボールのスイッチを入れ、防音室の電気を消したら壁に星が映りました。
そして、パソコンに星空を出しました。防音室の中いっぱいに音楽が流れました。
お爺ちゃんの防音室は宇宙の中にいるみたいになりました。
 
僕はお爺ちゃんの膝の上でパソコンの星空と、壁いっぱいの星を見ていました。
音楽が終わって防音室から出ると眩しくて目をつむってしまいました。
目を開いた時、僕は宇宙から帰ってきた様な気がしました。
僕の思った通り、お爺ちゃんの防音室は魔法の箱です。