最悪の契約になってしまった2020年オリンピック。

 1964年の東京オリンピックは10月10日が開催初日だった。その日を開催初日に決定した理由は、晴れの特異日で晴天率が70%ぐらいの確率だったからだと聞いていた。
 
 大陸から少し離れた日本は天候が不順であり、オリンピック開催中に雨の少ないシーズンを決定するのが難しいというハンディーがある。
 東京オリンピックの前の開催地はローマであり、その時に日本の関係者が毎日ローマの気象台に天気予報を聞くのを、ローマでは不思議がったという。それこそ、ローマの気象台では『今日の天気は昨日と同じ。明日の天気は今日と同じ。』というジョークがあったそうだ。
 
 日本は西欧諸国からみれば低緯度の国である。熊本とバクダットはほぼ同緯度であり、日本が大陸から切り離された島国でなければ砂漠であったかもしれないのだ。
 しかし、地理的条件による自然は容赦なく。冬には平野部にも丈余の雪を降らせ、春の初めには花芽を開かせる雨が降り、初夏には田植えに必要な雨を降らせ、夏には稲の結実を促す暑さをもたらし、秋にはまばゆいばかりの錦秋により心を和ませると共に、冬向かえの催促をする。
 日本とは湿潤で移ろい易い天候の国なのである。
 
 ところが、2020年のオリンピックはどうだろう。開催期間は西暦2020年7月24日から8月9日と、すでに定められている。
 どうしてその期間に開催すべしと定められたか判らないが、日程的には最悪である。今年の様に梅雨明けが早ければ酷暑に悩まされ、オリンピック後には『アスリートブレーカー』と呼ばれるかもしれないほどに、熱中症で選手生命を奪うかもしれない。
 あるいは、長梅雨の年であれば8月初旬まで雨が降り、屋外競技に支障を及ぼすかもしれない。
 そんな事を考えると、天候に左右されない場所は地下にしか無い。マラソンは地下鉄を停めて地下鉄線路を走り、トラック競技は地下の遊水地で行わなくてはならないかもしれない。
 
 もし、オリンピック招致運動の中で2020年のオリンピック開催期間が7月24日から8月9日と判っていたならば、一般市民にだってこの期間でのオリンピック開催が不可能である事は判る。それなのに、オリンピック招致関係者はその事を公にはしなかった。
 それとも、オリンピック招致関係者も知らなかったのだろうか。だとすると職務怠慢のそしりをまぬがれない。
 
 それではどうすればよいのだろうか。私なら、毎年同時期と10月10日頃にIOC委員を日本に招待し、日本の気候条件を体験させる。そして、1964年の東京オリンピックに先人がどれほどの心を込めていたか判ってもらう努力をする。
 とにかく、7月24日から8月9日のオリンピック開催は避けたい。