現代『親事情』

 小噺にこんなのがあります。
 親 :おい与太郎。いい年なんだから仕事をして嫁をもらえ。
与太郎:ウヘヘ。嫁さんか~。
 親 :好きな女はいねえのか。
与太郎:仕事したくねえから妹を嫁にしたら今までと同じだ~。
 親 :なんだと。この畜生野郎が。出て行け。
与太郎:妹と結婚して何が悪いんだ。親同士夫婦なくせに。
 
 まあ、小話の様に兄と妹が結婚できるのなら、結婚によるトラブルは少ないかもしれません。そうでないから、子供が結婚すると両家の親の静かな綱引きが始まるものです。
 私の知人に上が女の子で、下が男の子という人がいます。女の子が結婚したら母親が女の子を引っ張り、婿も大切にしていました。
 ところが、男の子が結婚したら自分達のやった様な事を嫁側の母親がやるのに腹を立てました。
 
 母親は歳をとったら娘に面倒を見てもらいたいので娘を引っ張りましたが、財産は婿でなく息子に渡したいと、自分が娘を引っ張った事を忘れて息子を引っ張る嫁の実家を憎く思ったのです。
 もしかすると、母親に息子を引っ張らせたのは男親だったかもしれません。自分が苦労して立ち上げた会社を娘の婿ではなく息子に継がせたかったのかもしれません。
 
 少子高齢化の現代、子供の結婚に親が干渉する事情は変わってきました。変わらぬものは、その底に流れる親自身の老後の不安と遺産相続の欲です。それこそが、いい歳をした親がエゴをむき出しにして娘や息子を引っ張る事になります。