安倍首相の教育改革とは?。

 6・3・3・4制に固定された教育制度にも手を加えて『飛び級』も検討するらしい。理由は『天才的才能を開発するため』だそうだが、私は何事でも制度改革という考えが出るたびに、その後ろに何があるのかを熟慮しなければならないと思う。
 
 制度改革で最悪のケースはアメリカのFBI連邦捜査局)だろう。ギャングなどが州境を越えて起こす犯罪が多発する様になり、従来の州ごとの犯罪取締りでは対応しきれなくなって1908年に設立され、1924年の組織改正にともなってジョン・エドガー・フーバーが初代局長に就任して組織は急速に拡大した。
 
 勿論、FBIアメリカにおける広域犯罪に功を奏したのは当然であるが、フーバーが行ったのは議員の身辺調査である。時が第二次世界大戦レッドパージに重なるので、FBIとすれば国内治安上当然の事であったのかもしれないが、フーバーは議員の女性関係から、出されるゴミの中の薬袋や処方箋などを見つけて議員の持病までも調べ上げた。
 ケネディとマリリンモンローの情事についても、モンローがマフィアとも関係している事をネタに縁切りをすすめたとされている。その様な事実から、フーバーは影の大統領とも言われたそうだ。
 
 禁酒法時代から力をつけたギャングとの戦いのために作られたFBIではあるが、その設立の表の利点に賛成した議員達が、裏面でFBIに牛耳られるとは思いもしなかったであろう。
 それはそのまま安倍首相の教育改革にも繋がるかもしれないのだ。すでに、金持ち優遇策をちらつかせる安倍である。表看板に『天才育成』を掲げて、金持ちの子弟を飛び級などで優遇し、格差社会を作る事も可能なのだ。
 
 学習院は、昔は貴族の子弟の学校であり、士官学校も軍人の子弟の学校であった。すなわち、実体は差別教育だったのである。安倍の教育制度改革に、私は胡散臭いものを感じる。
 『飛び級』などの特例を作る前に、硬直化した教育委員会制度を見直す方のが先だと思う。教育委員会制度だって、当初は戦前の軍国教育の反省から出発していたはずだ。ところが、時間が経つと、権威や利権が生じて人はそれにしがみつくので組織の硬直化が始まり、現在の有名無実な保守的組織になった。
 組織を新鮮に保つには人員の流動化を図る事が大切なのだが、教育関係にはそういう風潮は無いから、安倍はそこから手を付けるのが本筋である。王政復古が好きなら、ほかの事についても原点回帰をすべきだ。
 
 安倍首相の教育改革は、硬直化したルールを打破するために対抗策の新しいルールを作ろうとする事であり、その様なダブルスタンダードが上手く行った例を私は知らない。ただただ混乱の元となるだけの様な気がする。