カシオ(樫尾)兄弟。

 戦後に誕生した企業には、現在も日本を代表する企業がいくつもあります。それらを興した人々の人生には面白いエピソードが沢山あります。ソニーやホンダの創業話はマスコミで何度も採り上げられたので知る人も多いはずです。
 
 カシオも戦後創業の企業で、私の住んでいる場所からそんなに遠くない所に工場を建てました。初代社長はカシオ4兄弟の父親だったそうですが、その後が面白いのです。
 普通ならば長男が社長を継ぎ、弟達はそれぞれにふさわしい重役となるのでしょうが、カシオでは二男が社長になったのです。
 本で読んだところでは、長男が優秀な技術者だったから二男が社長になったそうですが、二男には長男や下の兄弟達と意思疎通を図る調整役としての才能があったとのだと思います。
 
 最初に生まれた子は親の愛情を1人で受け、子供時代には後から生まれる兄弟姉妹よりも知恵と体力が勝るので、リーダー的に育ちます。
 2番目に生まれる子は愛してくれる親と、自分より強い競争相手がいます。さらに自分より下に兄弟姉妹ができれば、そちらに親の愛が行ってしまった様に感じる上に、わけの判らない下の子とも意思疎通を図らなければなりません。
 必然的に2番目の子は、上と下との調整役としての資質を磨いているのです。その様に考えてみると、カシオの社長が二男である事のメリットが見えてきます。社長というのは新商品開発と販売強化の異なる要求を満たさなければならない究極的な調整役でもあります。きっと二男が適役だったのでしょう。
 
 私の知り合いに3姉妹がいました。でも、結婚したのは二女だけでした。昔の男性は家の中で威張っていましたので、言ってみれば『ワガママな擬似長男』だったのです。すなわち、二女は擬似長男と我が子の間を取り持つ資質を備えていたのです。
 勿論、調整役としての二男あるいは二女は人間関係に敏感です。だから、知り合いの3姉妹の二女は結婚前から『この女性といると落ち着く』と感じさせる性格だったのだと思います。
 その二女が時々ぼやいたのは『子育てが忙しくて気がついたら歳をとっていた』と『旦那が一番手がかかる』と『妹の様に母に思い切り甘えた事もないし可愛がられた記憶もない』でした。この言葉が調整役の本音なのかもしれません。それが家庭でも会社でも『上手く行って当たり前』という調整役の辛いところなのかもしれません。
 
 まあ、これは一般論です。実際にはそれぞれの子供の個性により差があります。ただ、私には生まれながらの個性と、成長段階で覚えた個性を区別するだけの能力はありません。我が子ですら何で性格が違うのか判らない親なのですから。(アセ・汗)