上級無線技術者、中級無線技術者、下級無線技術者。

 タイトルの区別は私の若かりし頃に無線屋の仲間内で使われ、国家試験の無線技術士の資格とは別です。大学を出て新しい無線システムを作れる人を上級技術者と呼び、中級技術者はそのシステムに必要な無線機を設計できる人々です。下級技術者は出来上がったシステムを保守する連中です。私は下級無線技術者でした。
 そして、上級無線技術者からこんな事を言われました。
 『日本社会の強さは上級だけでなく、中級、下級の技術者に人材が揃っている事だ。後進国には外国で勉強した上級技術者はいるが、それを支える中級、下級無線技術者がいないから後進国を抜け出せない。』
 私は今、それを強く感じています。大学への進学率が増え、現代日本ではすべての分野で下級技術者が不足しているのです。
 日本の人口の年齢構成は高齢者が多くなり、若年層が少ない逆三角形型だと言われています。そして、社会システムは崩壊の危険にあります。産業界も同様で、上級、中級技術者が増えても、その要望に応える事のできる下級技術者が不足しているのです。それにより産業は衰退し、国際競争力も低下してきたのです。
 私の近所で家を新築しているお宅があります。そして、大工の姿が少ないのです。あまつさえ、日本語のたどたどしい作業員が混じっています。家は外壁にペンキを塗って、内側に壁紙を貼ってしまえば壁の内側がどうなっているのか判りません。
 私は下級技術者不在の日本が再び『メイドインジャパン』を誇れる様になるには、下級技術者の復権しかないと思います。でも、進んで下級技術者になりたがる人はいないでしょうし、企業も下級技術者に高い給料を払う気などないと思います。
 でも、よ~く考えてみてください。ある種の企業では努力する社員には管理職(上級職)よりも高い給料を払うシステムの所があります。要は、経営者に旧習を打ち破る考えがあるかどうかなのです。