技術は磨いていないと遅れをとる。

 私が無線屋になった頃はまだ真空管が主流の時代で、トランジスタはプロの無線機には使われていなかった。理由はゲルマニュウムトランジスタ脆弱性と無線周波数帯での信頼が低かったからです。
 私がトランジスタで遅れをとったのは、ゲルマニュウムトランジスタはプラスがアースだったのと、トランジスタの入出力インピーダンスが低くて、インピーダンスの高い真空管の様に抵抗・コンデンサ接続が出来なかったからです。
 
 しかし時代は確実にトランジスタに移行し、シリコントランジスタの出現はその後の集積回路につながる大変革の前ぶれでした。私は30代にして電子技術に落ちこぼれ始め、若い無線屋のトランジスタの知識に追いつけませんでした。
 真空管式の無線機の調整や修理には絶対的自信があったのですが、プロ用無線機にもトランジスタやICが導入されると、修理はパネル交換に変わり、ハンダ鏝を持って個別部品を取り替える時代は終わりました。
 故障対応は現場で直すのではなく、故障パネルをメーカー修理に出す様になったのです。真空管の終焉と共に私の技術屋の時代は終わり、誰から見ても中年となった私はしだいに現場から離れて管理する立場の仕事をする様になりました。
 
 最近ではパソコンも限界です。PC-9801AUから始まった私のパソコンとの付き合いはスタンドアロンで市販のソフトを使う事であって、自宅でネットを組む事など考えていませんでした。数台のパソコンをつないだり、ネットへの出入り口となるルーターの設定となると、もうお手上げです。
 SEの息子がサーバーを立ち上げてネットを組み、不正アクセス防止にも効果のあるルーターの設定をするのを見ても何も判りません。隣で覗いていてもコマンドラインの作業はチンプンカンプンです。
 
 どんな仕事であれ技術の差というものは歴然としてしまうので、自分の技術力以上の事は理解できないし、不勉強では技量の差を埋められません。
 武士道という言葉は武士を特殊な階層にしていましたが、究極的には人を切る技能者だと思います。技量に差があれば弱い者は強い者に切られてしまうので、乱世には殺すために(殺されないために)必死に稽古にはげんだと思います。(怖ッェ~!!)