ぶっちゃけ。不幸な老後の誤算。

  ぶっちゃけシリーズ第3弾で~す。老人は寂しく人恋しいものです。なぜなら、人間は生まれた時と死ぬ時は自分では何もできないからです。だから、老人は赤子の様に頼るれ人を探します。でも、赤ちゃんの可愛さはなく、あるのは、容姿のみにとどまらず、ボケた頭で権謀術数をもてあそぶ老醜のみです。
 
  私の家の近くに、上下で八世帯分の木造賃貸アパートがあります。ある日、女房がそのアパートの前でボーとしている老婦人を見たので、気分でも悪いのか心配して声をかけました。
  老婦人は『別に気持ちが悪いわけではありません。ご心配いただきありがとうございます』と言いました。
  本来ならそれだけで立ち話は終わってもよいのですが、心に秘めた辛さが大きかったのか、老婦人がボーとしていた理由を語り始めてしまいました。
  実は、そのアパートは老婦人の夫が母親名義で建てたそうで、夫の母親が亡くなれば、自然と夫に相続される予定でした。
  ところが、アパートを母親にプレゼントした夫が亡くなってしまうと、夫の弟がシャシャリ出て母親を老人ホームに入れてしまいました。その母親が死んだら、すべての財産をその弟が相続してしまったのです。
  老婦人は、せめて夫が母親名義で建てたアパートだけでも取り戻したいと思ったのですが、老婦人が高齢であったために(ボケによる妄想と)言われて、それもできなかったそうです。
  道端での立ち話では、その老婦人がボケている様には見えませんでしたが、歳をとればとるほどにひどくなる女性特有の思い出話と真実をゴチャ混ぜに話す話法では、理論的世界で仕事をする弁護士も司法関係者も裁定を下す事ができなかったのでしょう。
  結局、スズメの涙の和解金で泣き寝入りとなったそうです。
 
  女房がお友達から聞いた話ですが、老いを自覚した女性の独居老人がお金の管理を弟に頼み、箪笥貯金から通帳、印鑑まで弟に預けてしまいました。ところが、弟からは2ヶ月ごとに支給される年金金額の現金しか渡してもらえないのです。
  自分でお金を管理していた頃は、お友達と食事をしたり、温泉旅行に行けたのですが、年金だけでは生きていくのが精一杯です。
  ヒョットすると、弟は姉の現金や預金を使ってしまったかもしれませんし、たとえ使っていなくても、弟が死んでしまったらすべてがうやむやになってしまいます。
  その女性の独居老人は、以前のお友達に会うと『私、貧乏なの』が口癖になってしまったそうです。そしてこれも、弟に渡した箪笥貯金や通帳を取り戻すのは不可能でしょう。だって、それらを弟に渡したという証拠を取っていないのですから。
 
  そうそう、こんな話も聞きました。別居の母親が、嫁に行った娘名義で貯金をしてやっていました。それを知った娘が『お母さん、私が死んだら、これ全部夫に行くんだよ』と教えてやりました。
  その母親が娘名義の口座を解約したのは当然の事です。ペットの名前でも架空口座が作れた昔の話です。今は、たとえ夫婦親子であっても口座解約を他人が行うのは難しくなりました。