知らない人からの食べ物は食べられない。

  10月1日のブログ『電車で席をゆずられる歳です』に座席をゆずってもらったお礼に根付紐をお渡しした話を書いたが、これが食べ物となると厄介になる。
 
  女房と一緒に外出すると、行列待ちなどで女房は女同士の会話に花を咲かせる。そんな時、仲良くなった女性から『飴ちゃん』と気軽に飴をもらう事がある。『旦那さんもどうぞ』と言われるが、私は「甘い物は苦手で」と断っている。
  実は、私には飴にまつわるトラウマがある。まだ食糧難だった昭和20年代なかばころ、私は有名メーカーのキャラメルを箱ごと拾った事がある。腹すかしの時代だったから、すぐに口に入れたが、一噛みで苦味が口に広がり、すぐに吐き出して2個目を食べたが、それも苦かったので箱ごとドブ川に棄てた。
  ガキだった私は知らなかったが、当時は毒物を入れた食べ物を誰かに食べさせたり飲ませたりする犯罪が少なからずあったのである。
  ひょっとすると、私もその時死んでいたかもしれないが、有名な『毒は死ぬから食べないのではなく、不味いから食べない』の言葉通りに、苦かったので死なずに済んだのだと思う。
 
  他人から食べ物をもらうのは、よほど親しい人でないかぎり始末に困る事がある。ご近所の、昔は庄屋をやっていたお宅での出来事だが、自宅前の道路を掃いている時、老婦人が親しげに話しかけてきて度々挨拶を交わす様になってくると甥や姪が一流企業の重役などと聞きもしないのに話したそうである。
  最後には『今日作ったからおすそ分け』と言って煮物を持ってきたので受け取ったが、すぐに『手元不如意なのでお金貸してくれます?』と言ったそうである。
  「ちょっと煮物を置いてきます」と家に入り、千円札を小さくたたんで、誰にも判らない様に握らせて「親戚に重役などがいるならそちらから都合してもらってください。もう2度と来ないでください」と追い払ったそうである。
  さて、その老婦人の持ってきた煮物はどうしたかというと、見た目にはよくできていたそうだが、いかんせん入れてきた器はインスタントうどんの容器というのが、あまりにチグハグだったし、どこの誰とも判らぬ人が作った料理は食べられないので棄てたという。
 
  まあ、我が家には来ないだろうが(私だったらどうしただろう?)と、その時は真剣に考えた。千円札を小さくたたんで渡すなんて私にはできないから、ストックしてある魚肉ソーセージを1~2本お返しと言って渡すくらいだろうかとその時は思った。今なら、絶対に根付紐だ!!。(笑)