老女の詐欺未遂?。

 私のご近所に80歳代の女性が一人住まいしている。週末には医者の息子さんが様子を見に来る。
 そのご婦人も生活に不安を感じているのだろう。女房が庭で草抜きや鉢花の手入れをしていると話しかけてくる。訳があって、私達はなるべく取り合わない様にしている。
 昔の事になるが、電話帳に一般家庭の住所氏名までが掲載されていた頃、このご婦人ではないが、警察に緊急時の連絡先として無断で電話帳のご近所の住所氏名を書いていた事がある。
 自分さへままならぬのに、近所で親しくなれば、何かの時に責任が生ずる。だから、独居の高齢者とはかかわりたくないのである。
 
 そういえば、私の知人の奥様に『私の息子は○○だ』とか『親戚には○○の重役がいる』などと、通りかかるたびに話しかけてきた老女がいたそうだ。
 そしてある日『お金を貸してくれない』と言われたという。その時は手元不如意でお貸しできませんと断ったら、後日煮物を持って訪ねて来て、奥様が留守だったので旦那さんにお金を貸してくれと頼んだという。
 旦那さんは千円握らせて「料理もいらないから2度と来ないでくれ」と追い返した。
 
 なんとも奇妙な老女の話を女房に聞かせながら「息子が優秀だったり親戚に重役がいるのならそっちから借金をすればよいのに、あれは寸借詐欺だったのかも、あなたも注意してね」と注意してくれた。
 まあ『貸した金は上げたものと思え』という言葉もある。私は親戚友人知人に金を貸す時は返さなくても笑って諦められる金額を貸そうと思った。そして、再度借りにきたら『前のを返したら貸してもいいよ』と言おうと心に誓った。
 
 ただし、プロの詐欺師は返済をキチンとやり、信用させてから高額の借金を申し込むという。『いままでキチンと返済しているでしょう』などと言われると、人間は断りにくくなるらしい。
 もう一つあった。『私を信用してください』を言う奴ほど信用できないという原則である。信用されない奴は自分で『私を信用して』と言い続けるしか方法がないのだ。