性病はなぜ撲滅できないか。

 『愛の形』は、梅毒に侵されて体が不自由になってしまった新妻の話でした。ただ、撲滅するとなると、SEXという人間の根源的習性に付随して伝染するので、根絶は非常に困難です。

 梅毒は、元々アメリカ大陸の風土病でコロンブスがヨーロッパに持ち帰ったとされています。日本に持ち込まれたのは1512年といわれますが、これはポルトガル人による鉄砲の伝来1543年より31年も早いのです。この事実だけでも、SEXに付随する性病蔓延の防ぎにくさを想像いただけると思います。

 また、梅毒とエイズの悲惨さは、その病状にもあります。梅毒では、菌がどこで増殖するかによって、鼻が取れるなど顔の変わる事もありますし、脊髄に入れば下半身不随や全身不随になり、脳に入れば気が狂ってしまいます。エイズでは、免疫力が低下して様々な病気にかかりやすくなります。癌にかかりやすくなります。癌の苦しさは想像を絶し、最後は麻薬系鎮痛薬の大量投与で痛みを感じさせなくするより他に手がなくなります。勿論、鎮痛薬を大量投与された貴方には思考も意思も無くなります。

 梅毒についての面白い話は、太平洋戦争中に南方でマラリアに感染した兵隊が、高熱で苦しんだら梅毒が治っていたそうです。また、私は草津温泉に度々行きますが、戦前までは草津に行くという事は、自分は梅毒患者だというのと同義語でした。酸性の強い泉質は梅毒でただれた皮膚の治療に効果があり、50度に近い温泉に耐えて浸かる時間湯は、高温化した血流で梅毒菌を殺す期待もあったと思われます。

 テレビで草津温泉の時間湯がアトピー性皮膚炎の治療に効果があるといっていました。以前テレビで、実際に草津温泉で働きながら、時間湯で半年以上もかけてアトピー治療に励む人のドキュメンタリーは感動ものでした。現代でも草津温泉は病気に苦しむ人の役に立っていると感じました。