神秘体験。

  前のブログ『山の鬼(後編)』の終わりの方で、長治の前に御仏が出現するなどという状況を神秘体験といいます。人間は神秘体験を経験するとその瞬間から超自然世界を信じる様になります。
 
  たいがいは宗教の修行中に神秘体験をする事が多いのですが、意外と身近に起こる事があります。私も視野に虹がかかり、目に見える物や人の周囲にも虹がかかるので、一見オーラが見えた様に感じます。
  しかし、私はその虹の正体を知っています。軽い低血糖で視神経が正常に機能しないために見える虹なのです。低血糖がもっと進めば冷や汗が出たり、体が震えたりします。さらに進めば意識を失い死ぬ事もあります。
  長治の見た御仏の神秘体験も疲労と夕食を食べなかった事による低血糖症状なのです。しかし、宗教にのめり込んでいると、それを御仏の奇跡と感じてしまうのです。
 
  犯罪宗教集団だったオウム真理教では、人為的に神秘体験をさせるために違法薬物を使用しました。教祖の麻原までがLSDを服用してラリり、なおかつ脱糞までしたのに『宇宙開闢を見てきた』と語ったそうです。以後、LSD修行?の時にはオムツをはかせる様になったと聞きました。
  従来ならば断食などの厳しい修行の末に神秘体験をするものなのですが、神秘体験後に一層宗教心が向上する事から、オウム真理教は薬物で信者に異常体験をさせたのだと思います。私は薬物で神秘体験をさせる宗教はインチキだと断言します。
   しかし、薬物による異常体験でも未経験者には強烈なインパクトになります。オウム真理教の薬物投与は絶大な成果を挙げたようで、信者は増え続けました。これは歴史上で有名な暗殺集団『アサシン』のやり方に似ています。
 
  アサシン伝説には山の長老と呼ばれる統率者がいて、若者をかどわかして大麻と酒と女による地上の楽園で享楽のかぎりを尽くさせた後に楽園を取り上げます。そして、再び楽園の酒池肉林に溺れる条件として暗殺を行わせたといいます。
  山の長老には多くのお得意先があった様で、大麻をあらわす言葉の『ハシシュ』や同音語は、現在でも世界共通で通じる言葉となってしまいました。
 
  だが、所詮。神秘体験というものは脳の誤動作である。
  ましてや、その誤動作を薬物によって体験させるのは法に反する行為である。薬物を密かに用いるのは傷害罪にあたるのである。また、たとえ、本人の意思により服用しても、薬物の薬効を偽って伝えれば詐欺罪にあたる。勿論、嫌がる人間に無理やり服用させれば暴行罪である。結果として死に至れば殺人罪である。