私の使った包丁。

 高校を卒業して自炊生活になるまでは、料理もしなければ包丁もほとんど握った事がなかった。包丁を握るのは、お袋に頼まれて菜切り包丁を研ぐ時くらいだった。
 
 自炊生活の時に買ったのが、通称『文化包丁』と呼ばれたステンレスの薄板を打ち抜き刃を研ぎ出し、カラフルなプラスチックの柄をつけた包丁だった。しかし、材質が軟らかく、しょっちゅう研がなければならなかった。
 文化包丁の刃もちの悪さにあきれて、半年もたたずに8インチの牛刀を買った。これは鋼も硬かったので、私には使いやすかった。だがある時、鋼の硬さから刃が大きくかけてしまった。牛刀は菜切り包丁と違い、すべて鋼でできているから欠けた部分まで研ぎ減らしたが、刃の形が変わって使いづらくなってしまった。
 
 次に住んだのは箱根だったが、まかないがあったので料理を作らなくてよいので、包丁の出番もなくなり、手ぬぐで巻いて荷物箱の底にしまってしまった。
 ところが、元箱根の屋台のラーメン屋が変な包丁を使っていたので、懇願して見せてもらった。それは、柳葉包丁の様に見えたが、実は使って使って使い込んで研ぎ減った牛刀だった。私は恥じ入り、しまい込んだ包丁を取り出して研いでいたら、まかないのおばさんにも包丁研ぎを頼まれてしまった。その間、まかないのおばさんは研ぎたての私の牛刀で料理を続け、切れ味が良いのでそのまま私の牛刀を使い続けた。最終的にはまかないのお礼に牛刀を差し上げてしまった。
 
 結婚した時に8インチの牛刀を女房にプレゼントした。これは少し軟らかい鋼で10年ほど使い続けるうちに、だいぶ研ぎ減った。
 すると、女房が自分で8インチの牛刀を買った。ところが良く切れるのだが、刃が薄く、カボチャなどを切ろうとすると包丁がしなってとても怖かった。そして、また以前の牛刀を使ったのだが、ペティナイフで料理する様なもので使いづらかった。
 そこで、両方の牛刀とも先端を切り落として、最初の牛刀は先を尖らせてペティナイフの様に使い、よく切れるが力をかけるとしなる牛刀は菜切り包丁の様な形にした。
 
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 (実物では上の写真の方が少し小さいです)
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 勿論、新たに8インチの牛刀も買っていたのだが、ペティナイフもどきと、菜切り包丁もどきが使いやすくて、スイカやカボチャなどの大物を切る時にしか使った事もなく、女房も菜切り包丁を買ったので、しまいには息子に上げてしまった。
 
 それ以外では出刃包丁も買ったが、大きな出刃包丁よりも小さなステンレスの鯵切り包丁の方が出番が多かった。それと、ステンレスの鯵切り包丁はキャンプでもよく使った。
 鋼の柔らかさは気に入らないのだが、アウトドアでの包丁は料理以外にもロープからテントのペグ用に木の枝まで切るから、刃が欠けずにダイヤモンドヤスリで直ぐに研げるステンレスの鯵切り包丁は重宝した。
 
 最近は人生最後の包丁として12インチの牛刀を買おうと考えている。研ぎ減らすほどには使わないと思うが、先を落として菜切り包丁の様に使うかもしれない。一般的に牛刀の刃幅は狭いので、菜切り包丁の様に使うには元の寸法が大きくないと困るのである。
 たとえ形は菜切り包丁もどきとなっても、すべてが鋼でできている牛刀の方が好き勝手に形を変えられるので私の好みに合う。