人間は政治と宗教の二重支配を受ける。

 最近、英国の物理学者スティーブン・ホーキング博士が神を否定した事を知った。天国は闇を恐れる人のおとぎ話とか、ビッグバンに神の意思は必要ないとか、宗教の基本は権力だが科学は観察と理論と語ったらしい。
 ヨーロッパの人が宗教を否定するのは大変な事だ。昔、シャンソン歌手のジルベール・ベコーが『死の発明者』という歌を歌った。歌詞は『人間が死を克服し神に報告に行くと、門番が神は今朝亡くなりました。』たしかそんなだったと思う。カトリック国のフランスでは轟々たる非難が沸き起こったと記憶している。ホーキング博士はイギリス人だが、多分バチカンではしかめっツラをしているだろう。
 私は『宗教の基本は権力』というのにはまった。私は昔から人間は政治と宗教の二重支配を受けていると考えていた。中世ヨーロッパの暗黒時代がその典型だが、日本もたいして変わらない。小説モドキの『ケンちゃん』もそれが主体で、最終回でそれをすべて書いた。
 
 日本の政治も、天皇制と政党政治の二重支配だと考えいている。すなわち、天皇制は日本神話と形骸化した古い政治形態であり、政党政治が現代の実体政治である。実体政治が破綻しても、形骸化しているとはいえ天皇制まで崩壊する事はない。ヨーロッパも同様で、古い政治形態の宗教は崩壊しないだろう。
 なぜ人間は二重支配されるのだろか。私は人間には心があるからだと思う。キリスト教徒は必ず『人はパンのみにて生くるにあらず』という言葉を口にする。すなわち、人間はパンで肉体を満たすだけでは真の満足は得られず、心の満足も無ければならないと言っているのだ。
 そこに宗教と政治が二重支配する余地が生まれる。実体政治は時間で大きく変化するので政変も起こるが、心は時代による変化が少ないので古い政治形態が宗教として残る余地があったと考えられる。
 日本で、もし天皇制が廃止されたらどうなるだろうか。ヒョットすると雑多な宗教戦争が起きるかもしれない。そんな事になると日本はテロ国家になってしまう。天皇制廃止の時には引き換えに、京都、奈良、滋賀の独立は必須と考える私である。