隣知らずの半殺し。

 ブルブル。続けて書くと物凄くぶっそうに聞こえるが、本来は『隣知らず』と『半殺し』は同じ物の名称で『おはぎ・ぼたもち』の別称である。
 餅はもち米を米粒の形が無くなるまで完全に潰すが、『おはぎ・ぼたもち』を作る時は米粒の形を残しておく。作り方も、餅は搗くが、『おはぎ・ぼたもち』は捏ねるので大きな音がせず、隣家に知られる事がない。
(餅は蒸し、搗き、丸めや延しと人手がかかり隣家の手助けが必要)
 そんな事から手のかからない『おはぎ・ぼたもち』に『隣知らず』とか『半殺し』の別称ができたのだろうと思う。あまりに面白い別称なので落語にそれを使った噺がある。
 旅人が一夜の宿を頼んで泊めてもらうが、夜中に家の者がひそひそと話している。ふと目覚めた旅人が耳をそばだてると『明日は半殺しにすっか』「それがいいねえ」と夫婦で話し合っている。ビックリした旅人は夜も明けぬ前に逃げ出してしまう。朝、客人のいなくなったのに気付いた夫婦が『せっかく小豆まで炊いて半殺しの用意ができたのに』「本当に、早立ちならおにぎりにしたのに」と顔を見合わせる。
 そうそう。NHK教育で金曜日の午前7時45分から放送している「テレビ絵本・えほん寄席」は、落語のエッセンスを5分にまとめて見せてくれる。私には物足りないが、面白い試みではある。