やはりエミは恋をしていた?。

 8日前の早朝に親父から『エミが去年の1月にカードで3回ウィーンのホテルの支払いをしているので近いうちにウィーンに行く。』と電話がかかってきた。そして、今日は親父からの早朝メールだ。仕事中に私事を挟まない様にとの配慮かもしれないが朝はやめてほしい。俺、朝にはメッチャ弱いんだぜ。
 
ケン。ウィーンで判った事をメールしておく。
一昨日からエミの泊まった(ザッハーホテル)に宿泊している。どちらかといえばハイクラスのホテルで昨年の1月のディナーにはフラメンコの生演奏があったそうだ。昨日はエミの写真を見せてフロントで色々聞いたら支配人が出てきてオフィスに連れて行かれた。
支配人にウィーンの警察に届けた書類を見せて娘が行方不明になり去年の1月に3回クレジット払いがあった事を伝えた。支配人は調べると約束し私をディナーに招待した。
支配人はディナーの席でさりげなくコピーを机に置いた。それはフラメンコ楽団との契約書の楽団員名のページのコピーだった。さらにエミがフラメンコのギター奏者とホテルのバーで話しているのを見かけた者がいた事やフラメンコ楽団がウィーンの後はミラノの(グランドエトデミラノホテル)へ行ったとも話した。ディナーの最後に、お気の毒だがこれ以上は判らないし協力もできないと断られた。
支配人の言葉通りにエミはそのフラメンコ楽団を追っている。2月には(グランドエトデミラノホテル)の支払いをしている。だがミラノへ行っても得られる情報は似たり寄ったりだろう。同様に他のホテルの支払いもギター弾きを追って泊まったホテルだと思う。すべてのホテルに行っても得られる結果は同じだろう。
もう一つ判らないのはピアノを習ったエミがなぜギター弾きに興味を持ったかだ。毎月の引き出しもギター弾きへ渡す金だたのだろう。定着ジプシーでも奴らか身を立てる事ができるのは闘牛かフラメンコだ。
それにジプシーは金にきたない。はたちそこそこの小娘から金を巻き上げるのを恥とも思わないだろう。エミは世間しらすな東洋のお金持ちの娘と思われ、金も体も奪われたかと思うとギター弾きを殺したくなる。
 
 親父にしてはかなり長文のメールで、俺にも携帯では読み直しが面倒だからパソコンに転送した。パソコンで見ると(短け~)と叫びたくなるが、老眼の親父が携帯のキーを一心に打ち込んでいる姿を想像すると、気の毒だが笑える。
 初めのうちは冷静だった親父のメールだが、エミの事では父親としての怒りが噴き出したのか所々に脱字がある。俺だって親父と同じ思いだ。でも、エミは今もそのギター弾きを追っているのだろうか。親父のカードの明細が見たい。親父も明細をFAXしてくれればよいのに。
 いや、待てよ。親父にはお袋に見せられない支払いがあるのかもしれない。あるいはプリントアウトをお袋が見て、さらに精神的ショックを受けるのを心配しているのかもしれない。それならログインIDとパスワードを教えたっていいじゃあないか。帰ってきたら絶対に聞き出してやる。