手塚治虫の愛の終焉の一つ。

 手塚氏の漫画にユーケイとその彼女の話があります。
 2人は共に革命活動をしていましたが、ユーケイは捉えられ流刑にされてしまいます。数十光年彼方へ流刑船が着いた時には革命が成功しており、折り返し地球に戻ったユーケイは革命政府で反対分子を殲滅する仕事に従事します。
 そして、辺境の地の安達が原へ鬼婆と呼ばれる反対分子を抹殺に来て、身分を隠して鬼婆の住まいに一夜の宿を請い、食事も饗されます。それは懐かしき恋人の味なのですが、用心深いユーケイは毒消しを入れ、恋人の料理の味が判りません。
 鬼婆を撃つと、瀕死の鬼婆は現革命政府の非人道性を語り、昔の恋人がその手先として働いていると、自分の事を語ります。ユーケイは老婆が共に戦った恋人である事を悟りますが、時すでに遅し。老婆となったユーケイの恋人は死んでしまいます。
 こんな愛の結末は嫌ですね。まあ、そのまま漫画として楽しんでも良いと思いますが、もう一つの見方として、レーニン共産主義国家の理想を求めましたが、スターリンに始まるその後の弾圧政治を揶揄しているのかもしれません。
 戦争を体験し国家の指導者に疑問を抱いた手塚氏ならではの作品だと思います。