下着を裏返して着る事になってしまった。

  30年以上も昔の事だが、ニューヨークでスポーツウエアを裏返して着るのがはやり、日本でもそれが、アッという間に流行して猫も杓子もスエットなどを裏返して着る奴があふれた。
  すでにいい歳だった私は『はやりに従うはいやしきなり』などと言ってそんな流行には惑わされなかったが、実際は(はやりに従えぬは貧しきなり)だったのである。
  だってニューヨークの裏返し事情は、有名スポーツクラブのロゴを出してジョギングしていたら、あいつは金持ちだと襲われるかもしれないので裏返したと聞いたからだ。ところが日本の流行はその真似だけで、スエットはロゴも無い安物だったりしたのだ。
 
  ところが最近、私も去年買った安物の夏用下着を裏返して着るはめになってしまった。昔の流行をまた再流行させようというわけはない。じつは、下着の首筋の所に縫い付けられているサイズ表示のタグがチクチク首筋に当たり痛痒くなってしまうのだ。
  今までは、首筋のタグはハサミやカミソリで切り取ってしまったのだが、安物だったので襟と一緒に縫い付けられていて、カミソリを使ってギリギリで切り取る自信がないので裏返して着るハメになったのだ。
  本当に歳はとりたくない。目は老眼、手先も鈍くなった。斧で薪は割れてもカミソリで縫い付けた糸ギリギリでタグを切り取る自信が無くなってしまったのだ。加齢というのは、できていた事ができなくなるので情けない気持ちになってしまう。(ショボン)