なぜ長兄は私を『いじめ』たのか。

  それは、年の離れた私が『お兄ちゃん、お兄ちゃん』とまとわりついて鬱陶しかったから!!。それとも、お兄ちゃんが学校に行って留守の間にお兄ちゃんの持ち物をおもちゃにして壊したから!!。
  それらもあったかもしれませんが、最大の要因は長兄が『いじめられっ子』だったからなのです。
 
  いじめられっ子だって人間です。プライドだってあります。いじめられれば肉体的苦痛もありますが、プライドは地に落ちボロ布の様に泥にまみれてしまいます。
  その泥まみれのプライドを元に戻すのにはどうすればよいでしょうか。スポーツで汗を流せばよいのでしょうか。それもありでしょう。しかし、基礎トレーニングの様なスポーツでは駄目なのです。1対1で勝敗を決し、なおかつ相手をギッタンギッタンに打ちのめす様な圧倒的勝利でなくては駄目なのです。
  まあ、一番簡単にプライドをよみがえらせるのは、自分より弱い者に自分がやられたのと同じ事をするのが手っ取り早いのです。しかも、自分がやられたよりも数倍のいじめをする事です。
  一時ドラマで有名になった『倍返し』という言葉ですが、潰れたプライドの痛みは大きく、数倍の暴力行為によりやっと発散され、いやされるのです。
 
  それでは、いじめられた私はどうしたのでしょうか。殴られれば当然泣きます。ひどく殴られればより大きな声で長く泣きます。なぜでしょう。それは、泣く事を親が嫌うからです。長兄にいじめられ、幼児にも存在するプライドをいやすために、絶対に殴らない母親を困らせて発散したのです。
  しかし、しかしです。そんな私を (この子はカンの虫が強いのでお灸で追い出しましょう) と、私をうつぶせに組み敷いて腰のあたりの背骨の左右に2つお灸をすえられました。
  とはいえ、カンの虫が強いのは私のせいではありません。お灸の跡が治らぬ間にまた長兄にいじめられて泣き叫び、再びお灸をすえられる始末です。まあ、前のお灸の跡が治っていませんからその近くにお灸をすえられ、お灸の跡が4つになりました。
 
  その後も、その4つのお灸の跡に何回かお灸をすえられましたが、私のカンの虫は治りませんでした。うつぶせの私の尻の上にまたがったお袋の体を不安定にさせるくらいの力が付くまでカンの虫退治は続きました。
  それに引き換えると、長兄の体はきれいです。自転車で坂道を全速でくだり、急ブレーキをかけて転倒した時の怪我の跡くらいしかありません。まあ、お互い心の傷跡は見えないので、どれくらい心が傷ついているかは知る事はできません。
  でも、長兄の心の傷は他人のいじめ。私の心の傷は家族のいじめです。動物の順位付けとは、動物の本能から生ずるものなので容赦がありません。
 
  まあ、結論としては、学校のいじめだって一般社会の尺度に照らし合わせて犯罪ならば、法の裁きを受けさせるのが正しいと、私は思います。