なぜ私は前2輪のトライクにこだわるのか。

  まだ酒にだらしなかった独り者の頃の話ですが、デートの相手もいないので毎日の様に赤提灯で飲んでいた帰りに、交差点の歩道を少しはみ出して信号待ちをしてしまいました。すると、左折してきたタクシーの後輪が私の右足の靴の先端を轢いて行ったのです。
  当時は靴の先が細く伸びたデザインの靴を履いていたので足の指は踏まれませんでしたが、靴の先っぽが潰れてしまいました。家に帰って靴の内側に丸棒を差し込んで直したのですが、右足の靴先は元には戻らず、変なシワもついてしまいました。
 
  いわゆる内輪差でタクシーの後輪が靴の先端を轢いて行ったのですが、歳をとれば感覚のすべてが鈍くなってきます。後2輪の普通のトライクだと、前輪が通ればと後輪の幅と内輪差を考えずに曲がってしまいそうです。そんな事で他人には迷惑をかけたくないのです。
 
  そういえばこんな事もありました。私の遊び仲間だった八百屋の男の子が父親のオート三輪の助手席で死にました。昔のオート三輪は前輪が1輪、後輪が2輪でした。そして、原則1人乗りで運転席の後ろはトラックの様な荷台になっていていました。
  助手席は運転手の左側の荷台の壁に簡単な座席がボルトで止められていました。助手席の座席は荷台に固定されているだけで、前にも下にもフレームなど無い簡単なものでした。
  その男の子は、父親の運転するオート三輪の助手席に乗っていたのですが、カーブで助手席が電信柱に激突して、荷台と電信柱に挟まれて死んでしまいました。交通事故の原因を調べる様な時代ではありませんでしたから、なぜ助手席部分が電信柱に激突したかは判りません。
 
  でも、運転手の父親がオート三輪の荷台の幅や内輪差を勘違いしたのかもしれませんし、車輪が滑って電信柱に激突したのかもしれません。でも、靴先を轢かれた私とすれば、内輪差は案外考えていない運転手が多い気がします。
  そういう意味で、私は後2輪のトライクよりも前2輪のトライクならば、どんな急カーブでも後輪が前輪よりも内側を通るとは思えません。後1輪のトライクならば、後方の車幅に注意しなくても安全だと考えています。