夫婦の会話はいつしか夫婦漫才になる?

  永いこと夫婦でいると、自然と気心が知れ、たまに気分的な甘噛みに牙を出してみたくなる。別に夫婦喧嘩までしたいわけじゃあないから、牙の出し方には気をつけるけど、ちょっと相手の気を引いてみたいのだ。
  牙の出し方は、女房の手を握ったら「痛い」と言われるくらいで、調べてみたら指にササクレがあった程度の痛さでよい。要は、慣れと習慣でナマ返事を返されるのを、ちょっと振り返ってマジに応えてほしいくらいの痛みでよいのだ。
 
  女房も、私がナマ返事をしていると、牙だけでなくほんのちょこっと毒の入った言葉をシレッと口に出す。私が『エッ、なんだ?!』と振り向くとニコッと笑う。
  たしかに長年連れ添っていると、お互いに慣れというか、いちいち面倒くさいというか、話しかけられて鼓膜は震えても意味など理解する気もなく『聞いてますよ~』という信号の意味で『ウン』とか『ヘ~ェ』とか『だから』とか『なるほど』などといい加減な返事をしている。すると突然「○○ってどう思う」などとナマ返事では答えられない弱い毒の言葉を投げつけてくる。
  そうなるといい加減な返事もできないから『そうだな~』などとマジに考え始めると、追い討ちするかの様に「いま聞いてなかったでしょう」と牙を立てる。『ばれてた?』ととぼけると「やった~」と言うがごとくに、ククククッと笑う。
 
  マッ、夫婦なんてそんなもんだよな。四六時中『好きだよ』『愛してる』などといい続けられるわけもなければ、いつも女房に熱い視線を送り続ける事もできない。
  もし、四六時中女房に熱い視線を送り続けたとしても、どこかのCMではないが「どこ見てんのよ」とか「暇だったら座ってないで手伝って」とか「手元をちゃんと見て仕事しなさいよ」と言われるのがオチである。
 
  結局、夫婦は阿吽の呼吸で生活しているのだけど、その中で時には「こっち向いて」と牙や毒を出すのだと思う。我が家の傑作な気にしてサインは、女房が隣で「シューシュー」と言うから『なに?どうしたの!』と聞いたら「いま、毒吐いてるの!!」と答えたので、夫婦そろって大爆笑してしまった。今でもこの話題では大爆笑になる。(同じ事を私がやっても面白くないけどね!なんでだろう?)