日本刀の弱点。

 日本刀は高炭素鋼でできていて、硬くて曲がりにくくよく切れる。だが、高炭素鋼は低温(ー30度位)になると折れやすい。
 
 昔、従兄弟が関東軍に配属され満州に行った。そして、直属の若い士官が部下の前で気合を入れようとして、真冬の早朝に自慢していた伝家の名刀で巻き藁を切ろうとしたら、刀が折れたそうだ。
  また、登山用具のカジタの先祖は刀鍛冶だったっそうで、近代登山の道具としてピッケル(氷斧)の製造を頼まれ、日本刀と同じ鍛え方で造ったそうだが、最初のピッケルは冬山で折れてしまったという。
 
 八路軍共産党軍)が使っていた青龍刀は切れ味は悪いが折れにくかったそうだ。ヨーロッパの剣も昔は幅広の剣だったらしい。要は、切るというより相手の剣をへし折る事に重点が置かれていたのではないだろうか。
  しかし、剣をへし折る剣は必然的に重くなる。また、空振りすると体が流れてその隙を攻撃される危険もある。
 
 文化は異質の文化にふれと大きく飛躍する事がある。聞いた話だが、日本刀の切れ味に魅入られたゾーリンゲンの職人は日本刀の低温で折れやすいという欠点を克服するために様々な鋼合金を研究したという。
   結果として、日本刀は鋼を鍛えて形にしていくが、西洋の刃物は鋼合金なので削り出して形を作っていく様になったと聞いている。
 
 ただ、鉄の比重は約8なので、鉄製品はかなり重い。日本刀も体格の貧弱な日本人に合った剣だというし、ヨーロッパで軽い剣といえばフェンシングの剣は軽くできている。
   さらに、剣というものは戦い方の変化によって形を変える。昔の戦いは短時間で終わったが、文明が進むに従い戦闘時間が長くなってきたので、長時間戦闘可能な軽い剣に変化し、銃が戦闘の主力になると剣も姿を消し、ナイフで充分になった。

(ナイフの最低性能は墜落した飛行機のジュラルミンを切り裂き脱出口を作る事である)