安倍首相は大企業優遇政権。

 安倍首相が今国会でどうしても成立させたい法案は『労働者派遣法』である。一見、派遣労働者保護の様に見える法案であるが、私には腑に落ちない部分がある。多分、そこがこの法案を持ち出した理由なのだと思う。
 労働者が支持母体の民主党は労働強化につながる事ばかりに目が行っているみたいだが、私は派遣会社がこの法案のターゲットなのではないかと感じている。
 
 日本は敗戦後に財閥が解体された。それは、軍国国家から大量の受注を受けるために戦争をも是とした財閥の消去であった。戦後は財閥を創らせないために、日本では持ち株会社が認められなかった。
 ところが、バブルがはじけて不景気になった時、銀行や企業の統合合併が始まり、持ち株会社が認められてしまった。財閥は復活したのである。
 
 財閥の特徴は傘下に多くの会社を従えた、仕事の系列化という下請け化である。今、銀行に行くと客には何も変っていない様に見えても、窓口の行員は銀行本体の社員ではない。銀行の子会社の派遣社員なのである。ゆえに、銀行がいくら儲けようとも、派遣労働者である窓口社員はその恩恵を受けられないのである。
 銀行の場合は、バブル崩壊で青息吐息となった銀行が経営軽量化のために、窓口部門の社員を子会社化したから、多くの窓口社員には業務のノウハウがあった。だが、銀行の窓口の仕事が、未経験のズブの素人にできるだろうか。どんな仕事にもノウハウがあるから、素人には直ぐできるわけではない。
 
 安倍首相の目論む『労働者派遣法』の中には、派遣会社に派遣社員スキルアップの義務化が含まれている。ここがミソだと私は思う。すなわち、本来ならば企業が行わなければならない社員教育を派遣会社に丸投げしようというのだ。
 だが、派遣会社に派遣先の仕事のノウハウなんてあるわけがない。否応なく派遣会社は派遣先の企業にすり寄るしか方法がない。結果的に派遣先の企業に子会社化されるのがオチだ。
 
 ではなぜ、安倍首相はそんな事を行うかである。バブル崩壊後の苦しい時に大企業は社員を切り捨て、賃金の安い派遣社員を雇う事で一息ついた。その時はそれで安堵した。だが、派遣社員が増えるに従い、派遣業がおいしく見える様になったのだ。
 ゆえに『労働者派遣法』を改正してスキルアップの義務を負わせ、派遣会社側から大企業にすり寄らせようと考えた。いずれは傘下に吸収してしまうつもりなのだ。子会社化すればトップの人事は親会社に握られる。その時、創業社長は追い出されるのだ。
 ひょっとすると、安倍首相の腹の底には『財閥復活』のたくらみがあるのかもしれない。