竹中平蔵と自民党政治。

 竹中平蔵は経済政策のブレーンとして15年以上も自民党と付き合いがある。有名な経済学者らしいが、私は良い印象を持っていない。なぜなら、彼の提言による自民党の政策は労働者に厳しい状況を作り続けたからだ。
 バブル後の日本を立て直すために繰り出された自民党政策は、若年労働者の希望を奪うものばかりだった気がする。そして、現在も多くの若年労働者が低賃金にあえいでいる。
 
 竹中平蔵はマクロ経済の判る学者かもしれないが、足元のミクロ経済にはとんと関心が無く、もちろんミクロ経済についての知恵も無い気がする。
 現在は株価が最低期の約2倍に上昇したが、それは経済回復を伴っての上昇ではない。単に安倍首相の円安誘導への政治介入とインフレ経済演出の結果である。言ってみれば、円安誘導で輸出産業の動向が良くなるであろうとの思惑に過ぎない。
 うがった見方をすれば、バブルで高い株を買い、現在それを塩漬けにしている国会議員に、たとえ半額でもいいから売り抜けてしまえという政策に見える。結局これも、ミニバブルに踊らされる庶民が損失を被るのである。
 
 ミクロで見た日本経済は依然として低迷を脱していない。それは、以前にも書いたが銀行預金の利子の低さをみれば判る。銀行利子の低いのは企業活動の低さのバロメーターである。
 ミクロで見た国民支出の低さは商店のチラシを見れば判る。商店の目玉商品の値段は消費税5%の時と同じか、時としてそれ以下の値段で売られる。それは、消費者の購買意欲が回復していないという事である。
 
 では、なぜそうなるのだろう。それは、デフレを経験した事と実質賃金が低下した事に由来する。
 デフレで多くの商品が底値以下の低価格で売られた。だから今、インフレ経済を演出してみても実質賃金の低下した状況下では、庶民は高値に思える消費を避けるしかない。ゆえに、ミクロ経済は活性化しないのである。
 だから、マクロしか判らない竹中平蔵のアイディアによる自民党経済政策は成功しないのである。一部の高級商品が売れても生活基盤の商品が売れなければ、市場経済が活性化したとは言えないのである。どうも安倍首相はこの辺が判っていないみたいだ。
 
 こんな時こそ、仁徳天皇の『民のかまど』の故事にならい、庶民の購買意欲を増す政策を考えるべきだ。企業を富ませ社員の収入を増やすという、竹中平蔵お得意の『上流から下流』理論は時間がかかり、悪くすれば格差ばかりが開く庶民泣かせの手法である。