定年離婚。

 知り合いに、奥さんから『定年離婚』を突き付けられて別れた人がいる。離婚の理由は定かではないが、それまで奥さんは『りこん』の『り』の字も言い出した事がなく、旦那さんにとっては寝耳に水の話だった。
 
 まあ、離婚という事で話がつき、奥さんは旦那さんの退職金のほとんどを貰って別れたものの、それを食いつぶしては老後に不安が残るので働き始めた。
 姑から厳しく家事を躾けられたので料理の腕がよく働き口には困らなかった。そして、働いてみて判った事は『自分の旦那は良い亭主』であったとの事実であった。
 
 姑に厳しく躾けられている時にかばってくれなかった旦那にも嫌気がさしていたらしいが、離婚だけを考えていた時は旦那の良さには目がいかず、別れた後で旦那の良さに気付いたという事である。
 そして、言葉の端々から伝わる離婚原因は姑の厳しい躾けが発端だったらしい。仕事と子育ての時期は姑と別居していたが、子育ても終わり退職後は旦那の実家に姑と同居するというのが、どうしても我慢できなかったらしい。
 
 跡取りにふさわしい様にとの姑の厳しい嫁への躾けが、嫁からみれば『嫁いびりの激しい鬼姑』と受け取られてしまったのだ。
 親と子の思惑のすれ違う原因は、多分常識の違いで、今風にいえばジェネレーションギャップなのだろう。