どちらが先に逝くかで遺言は変わる。

 まあ、女房の方が年下だし女性の平均寿命の長い事を考えれば、普通であれば私が先に逝くであろう。しかし『一寸先は闇』と言われる様に何が起こるか判らない。すると遺言は先に逝った場合と後に逝く場合の2通りで考えなければならない。
 
 息子どもにどうすべきか心は乱れても、女房には1度も心乱れた事はない。昔から「離婚する時には財産すべてをお前にやる」と言い続けているし「俺はワンボックスタイプの新車があればいい」というのも変わっていない。
 変わるとすれば、若い時は車上ホームレスになるつもりだったけれど、もう少し歳がいったら自動車よりもリアカーホームレスの方がよいかもしれない。まあ、ここまでくれば離婚はほとんど考えなくてよい気もしてきた。
 
 今の我が家の欠点は不動産名義が私である事だ。私が先に死ねば相続の権利は女房に半分、息子どもの取り分は1人1/4になる。多分、息子どもは不動産の代わりに金を要求するだろう。しかし、その要求にこたえると女房の老後の不安が増える。
 私達の結婚生活は長いから不動産を女房と共同名義にする事ができると聞いた事がある。共同名義にすれば息子どもの取り分は1人1/8になるから負担は大幅に減らせるし、息子どもの『お母さんの面倒は俺がみるよ』などの言葉にも心が揺れる事も無くなるだろう。
 
 どちらが先に逝ったとしても、残された親の面倒は結婚しなかった息子にはみられないだろうし、結婚した息子の嫁とは交流が少ないので不安が残る。第一、嫁も自分の親の面倒をみなければならないから、合計3人の親をみる事は無理だろうし、年に数回しか会わない私達との心のつながりもできていない。
 まあ、少子化時代の親には親の目論見や算段があるもので、子供たちに気付かれぬ様に静かにそれを画策し実行しているものである。