私の考え方を変えた本。

 私が子供だった頃はカラオケもゲーム機も無かったし、テレビも高嶺の花だつたので、ラジオを聴くか本を読むくらいしかなかった。だが、私の目の鱗を剥がしたというか、色眼鏡を外したというか、あるいは色眼鏡をかけたかもしれない本が『日本人とユダヤ人』であった。
 まあ、日本人の常識というか、20代半ばの私の常識を打ち砕いたのがこの本である。
 
 しかし、この本は発売直後にイザヤベンダサンというユダヤ人が書いたのか、山本七平が書いたのかで物議を起こした。特に本多勝一が激しく噛みついた。そして、イザヤベンダサンというユダヤ人が架空の人物である事が判った。
 しかし、著者が架空の人物であっても本の中身には関係ない。それよりも、有名な実証主義のジャーナリストであった本多勝一が噛みついたという事は、本の内容にそれだけのインパクトがあったという証拠である。
 
 私の頭を一番とらえたのは『全員一致の議決は無効』というところである。反対意見が無いという事は欠点を見逃したか見ない様にしているか、さもなければ全員が異常な状態にあったという事なので、議決は『無効』という考え方だった。
 何事にも『全員一致』が望ましいとする日本の常識に浸りきっていた私には、この考えは強烈なアッパーカットを喰らった様で、一瞬頭が白くなり、その後大笑いをしてしまった。
 そのせいで、私は社内会議で文句ばかりいう嫌われキャラになってしまった。多くの場合、社内会議は事前に根回しをして会議の席では短時間で『全員一致』とするのが普通であった。
 しかし私が入ると、疑問点や欠点を言うので会議が長くなり、主催者の足を引っ張る形にもなるので、主催者からも嫌われたし、私自身も社内の異端派と見られて損をした。
 
 もう一つは問題解決方法である。解決しなければならない問題が起きた時、様々な解決案を紙に1つづつ書き、20~30枚になるくらいの案を出す。勿論、その中には実行できない様なアイディアがあってもかまわない。とにかく沢山の案を出す。そして、その中から実行可能な案の数点に絞るというやり方である。
 このアイディアを大量に出すという方法は常識を破る手法であり、常識に束縛された思考の枠を外して根本を見直すという道につながるのである。要は、停滞した所に問題が生じるのであって、それは常識で解決できない事が多いからである。
 そしてその後、日本の企業に『品質管理』という考えが導入され、社内で『QC活動』が行われる様になり、後には全国大会も開催される様になった。そして、そのやり方の基本が『日本人とユダヤ人』のこの方法であった。
 
 私は今もこのやり方を守っているが、ベラドンナちゃんでは失敗した。原因がECUの温度上昇と判っていたのに、無線屋だった私は電気系にこだわり、もう一つの解決策であるECUに冷却フィンを付ける案を2番手にした。なぜならばECUはデコボコしているので板金など金属加工に自信がないから逃げた。内蔵助!それがお前の正体だ!!。