マニアはプロになれない。

 システムエンジニアの息子が面白い話をした。それは『今の新卒は体力が無い』との愚痴だった。パソコン好きが高じてシステムエンジニアを目指した新米が、ルーターの重さにバランスを崩して落としそうになったり、カタリストを持ち上げられなかったりで危なっかしくて困るとの事だった。
 
 パソコン好きは、パソコンが軽いのでシステムエンジニアは楽な仕事と思って就職するのだろうが、プロの機械は信頼性こそが重要なので、重く頑丈に造られている。体力の無いパソコン好きやパソコンオタクはプロになれないのだ。
 そういう息子も1度失敗している。ラリーやジムカーナが好きなのでカスタムショップに勤めたくて訪問したら『整備士の資格はあるの?うちで技術を覚えて資格を取ろうなんてえのは駄目だよ』と門前払いをくらっている。かわいそうだったが、マニアには容易に越えられぬプロの壁の高さを知った日になった。
 
 話は変わるが、ソニーウォークマンを発売し、常時ヘッドホンステレオを聞く若者が増えた頃、当然ながら音楽好きが高じてソニーに入社したがる者も増えた。ところが、そんな若者は使えなかったそうだ。
 たとえヘッドホンでも、大音量で長時間音楽を聴くと耳の感度だけでなく、周波数特性も悪くなり、大好きな音楽の仕事には使えなくなってしまう。そんな話をむか~し聞いた。プロとは厳しいものなのだ。
 
 そういえば子供の頃、電気屋さんにコンセントを増設してもらった時、母が『少しまけて』と言うと「コンセントなどは原価にしますけど苦労して身につけた技術料はおまけできません」と言い、少しだけ安くなった。
 
 プロは技術を売るのだから技術をケチってはならない。まして、素人にバレる様な手抜きをしてはならない。我が家はA化成のHハウスであるが、ここの手抜きは目に余った。注文した壁補強はやってないし、壁の保温材もTVCM通りにはなされていない。
 その上、工法書を見せる様に要求したのだが、施主である私に見せる事はなかった。結局はA化成という親会社は契約金の多くをピンハネし、子請け孫受けに丸投げするので末端の請負業者は損失を出さないために目に見えない所で手を抜く。
 
 私は自分が買った商品にクレームをつける方ではないが、さすがに壁補強の手抜きにはクレームをつけた。
 壁の補強は私のライフスタイルにかかわるので引き下がる事ができなかったが、保温材については壁を全部剥がさないと判らないのであきらめた。しかし、そのせいで夏は暑くて冬に寒い家となった。
 壁の補強には下請け業者が手直しに来たが、A化成の現場監督は『完成引渡しをしたのでア~だのコ~だの』と言って来なかった。
 しかし、下請けが手抜きをしたのは元請のA化成の現場監督(現実にはこれもA化成の下請け社員)にあるのだから、最終的責任を果たす道義的義務はあるはずである。
(訳の判らないTVCMを流すA化成とはこんな会社である)