職業は人を創る。

 昔、テレビで大工の親方に女性アナウンサーが『人生の恩人は誰ですか』と尋ねたら「大工の親方」と答えた。続けて『優しい親方だったんですか』と聞くと「怒られたし、材木で殴られたし怖い親方だったよ。だけど、そのおかげで今まで食ってこれた」と語った。
 私にもそういう人がいるから、涙が出そうになった。
 
 人間は最初の職業でその後の人生の決まる事がある。昔、豊田商法と言われた詐欺事件があった。純金を販売するという商売だったが、セールスマンには純金を売らせ、お客には『お客様の純金は当社の金庫に安全に保管し、お預かりします』と言って、純金の預かり証を渡していた。
 結局は詐欺事件だったのだが、販売員の中には「私のお客様だった人には働いてお金を返します」という元セールスマンがいた。このセールスマンなど非常に珍しい人だったと思う。
 
 かたや、現在のオレオレ詐欺にかかわった人達の未来はどうなるのだろうか。多分、正業にはつけないと思う。なにせ、苦をせずに月に数百万円も稼いでしまうのだ。苦労して月に20万円ももらえないとなると、まともな商売などする気が起きないと思う。
 現に、豊田商法にかかわった中心部の人物は、ネズミ講で詐欺に加担した人間だったと聞いた事がある。詐欺事件は、詐欺にかかわり、習い覚えた者が次の詐欺事件にかかわる事が多いという。
 
 どの様な職業でも、それぞれに仕事のコツというものがある。初めて職に就き仕事を覚えて習熟すると、その仕事が自然と上手くなる。そして、基本的には生き方も人生観も仕事を通じて覚えていくものである。
 例外としては、趣味も人生観を変える事がある。ゆえに、仕事も趣味も心して良きものを選ぶ必要があると私は考える。