今年は山栗を食いそびれた。

 草津のサイクリング道路を歩くと、山栗の季節には足元に実の落ちている事がある。栽培栗に比べれば小さいし甘みも少ないが、自分で拾ったのだから必ず茹でて食べた。
 
 仕事で群馬に住んでいた頃、裏妙義の『丁須の頭』という名称だったと思うが、山の上にローマ字のTの字の形をした岩がある。そこまで登ろうと家族で出かけたのだが、途中で洋菓子を買い、その中にリキュールのたっぷりかかったサバランが2個あった。
 私は運転するので食べられないので、女房が甘さにつられて2個食べた。山道の上り坂にかかるとアルコールが回り、登れなくなってしまった。仕方なく『丁須の頭』はあきらめて山栗拾いをした。ところが、ほとんどの山栗は猿にカジられていた。しかも、猿は全部食べるわけではなく半分くらいしか食べない。心の中で(もったいない食い方をしやがる、人間は全部食うぞ)と毒づいた。
 ところが、よく考えてみると、猿が綺麗に食べて殻だけ落としていたら、木に登れない地上徘徊の動物は山栗を食べる機会がなくなってしまう。それこそ虫喰いの山栗しか食べられなくなってしまう?かもしれない。(カチカチ山の考え方が少し変わった時だった)
 
 もう一つ思い出した。家に持って帰って虫喰いの山栗を選別していたら、栗に混じって山ヒルが1匹出てきた。尻で机に吸い付き、頭を思いきり伸ばしてユラユラと獲物を探っていた。子供に『この黒っぽい色をしたのが山ヒルで、小川など水の中にいるヒルは白いんだよ。どっちも血を吸うからね』と教えた。
 山ヒルは血を吸っていなければ細いし、体長も3cmくらいなのだが、どうも指で潰すのは気持ちが悪い。山登りでは、山ヒルに喰いつかれたらタバコの火を押し付ければ山ヒルが逃げようとして口を離すから、手で引き剥がすよりも出血が少ないというのを聞いていたので、タバコを吸わない私は山に持っていくライターを使った。タバコより火力が強いのでスルメを焦がした様なにおいがした。