常識を疑えぬは愚かなり。

 宗教団体『幸福の科学』の大川総裁が『霊言』により、元慰安婦2名の守護霊を呼び新証言を得たという。そして、2女性が13歳や14歳で慰安婦にされたというのは嘘だと報じた。
 ではなぜ嘘をついたのか。それは歳を若く言えば同情が集まるから年齢を偽ったと『霊言』により守護霊が応えたという。
 
 橋下も大川も戦後だいぶ経ってから生まれた。いや、性欲を覚える年齢の時には、すでに管理売春は無く、管理売春の実態など知らぬままに育ち、知ろうともしなかった。
 私は、13歳や14歳の売春婦がいなかったとは言い切れないと思っている。それは、童謡『赤とんぼ』の歌詞に『十五で姉やは嫁にいき』とある事から、性生活に入る年齢が若かった事が判る。
 
 『新造(しんぞ)』という言葉に『遊里で姉女郎の後見つきで新しくつとめに出た若い遊女』という意味があり、初物に大金を積む年寄りのお大尽もいたから、遊郭では高く売るために15歳以前でも客をとらせた事も想像に難くない。
 現在でも、初潮の頃合は年齢ではなく身長でほぼ決まるという。成長は個人差が大きいから、当然の事ながら遊郭では少女の年齢ではなく、育ち具合で客をとらせたであろう事は想像に難くない。
 すなわち、大川の思考も現代の常識を疑わぬ範疇での発言であり、万人を納得させる事の不可能な『霊言』なんぞで確証を得たからといって、それにより慰安婦の人権侵害が許されるわけも無い。(宗教家・大川も慰安婦問題を人権問題と理解していないのが情けない)
 
 私は何度でも言う。管理売春は女性の人権を侵害する行いである。また、人間とは常識を疑わぬものである。
 ゆえに、太平洋戦争当時。慰安婦を管理売春の手法で集め、管理したであろう事は想像に難くない。
 
 極論すれば、証拠の有無や軍の関与など関係ない。状況証拠は慰安婦がいた事を証明し、管理売春が実在した事から、その常識的手法で慰安婦が管理された事の想像も難くない。
 人権問題や人道問題は常識の枠を取り払い、純粋に理論的に考えなければならない。たとえ過去の問題であっても、人権や人道に反する事であれば、2度とその様な事が起こらない様にしなければならない。
 慰安婦問題(管理売春)が女性の人権を蹂躙した事は明白である。これを常識の範囲で判断するのではなく、理論的に正しく考えないと、火の粉は男にも降り注ぎ、兵役の義務を負わされ、人殺しを命じられ、命を落とす事になるのだ。
 
 女性の人権を蹂躙したのが管理売春であるならば、男の人権を剥奪するのは徴兵(兵役)である。
 戦場でゴミの様に死にたくなければ、慰安婦問題をおろそかにしてはならない。国家の面子や歪められた歴史観に目を曇らせて、人権問題をおろそかにすれば自分の命を戦場に散らせる一歩を踏み出す事になる。
 
 しかし、しかしである。人権問題に気づかない弁護士。心の苦しみの判らぬ宗教家。そして戦前の日本を正当化しようとする政治家。名の知られた人間が悪しき行いをする。現代日本は恥を忘れた社会になっている気がする。