隣近所の世代交代。

 駅から3分ほどの、昔は産婦人科だった病院が取り壊され約千平米の更地になった。そして、7階建てのマンションの工事が始まった。
 それだけではなく、ご近所でも家の建て替えがいくつかあった。今は先日まで箪笥などを粗大ゴミとして出していたお宅で大掛かりなリホームが始まった。多分、子供夫婦と同居するための工事だと思うが、建て替えると建蔽率容積率の関係で、現在の家よりも狭くなるのでリホームという形で新築同様にするらしい。
 
 そういえば、以前『新築そっくりさん』とかいう言葉を聞いた事がある。建蔽率容積率のゆるかった時代に建てられた以前の家にそっくりだが、実際にはすべてを造り替えてしまうという宣伝だった。
 人間も歳をとるが、家だって年を経れば古くなり不具合も増えてくる。ましてや、老後の不安から子供夫婦と同居を考えれば、同居してもらうために家の新築や改築などをしなければならない。
 
 勿論、子供と同居できる幸福な老人ばかりではない。先日取り壊されたお宅は、以前老夫婦が住んでいた。いつしか夜の明かりが消え、どこかへ引っ越したと思われた。そして、家は取り壊されて更地となり、不動産業者の看板が立ち、今は建築工事が始まった。
 私の住んでいる向こう3軒両隣もあと10年ほどで多くが死んでもおかしくない歳である。その上、子供夫婦と住んでいる家庭は1軒もない。私の所もそうだが、すべて高齢核家族である。
 
 倫理と現実にはさまれた老親問題ではあるが、子供の側から考えると少子化時代の子供もわいそうである。結婚した事により、自動的に4人の老親の老後をどうするかという問題がのしかかってくる。豊かな親ならばまだよいが、親も蓄えが少なく、子供達も豊かでないとなると悩みはつきない。
 人間は産まれた時と、死ぬ時には誰かの手を借りなければならない。しかし、水洗便所の普及と共に、人間の生死も日常生活から遠ざけられてしまい、我々はそれに触れなくなってしまった。そして、親子共に老後問題に悩む様になった。