なぜ思い出せない記憶があるのか。

 前回のブログ『ヒョンな事で蘇る古い記憶』に、子供の頃の豚毛の歯ブラシにまつわる記憶と、子供になぜ勉強が必要なのか問われた時の記憶の事を書きました。ともに忘れていた記憶ですが、なぜかあまりにも古さに差があります。
 豚毛の歯ブラシは幼児期から少年期の古い記憶であり、日常生活でも思い出す必要のない記憶です。ところが、子供の質問に答えられなかった記憶は忘れてしまうほど古くはないので、思い出したくない『蓋をしてしまいたい記憶』だったのです。
 
 もう1つ気づいたのは、豚毛の歯ブラシの記憶も子供心には『蓋をしてしまいたい記憶』だったと思います。でも、あまりにも長い時間の経過で忘れた記憶となり、思い出しても恥ずかしさより懐かしさを感じてしまったのでしょう。もう一方はさほどの時間も経っていないので『蓋をした事を覚えている記憶』で、思い出すと今も恥ずかしくなります。
 
 それから時々、仕事の失敗がフラッシュバックして『ア~ッ』と声が出てしまい、女房に「どうしたの」と聞かれる事があります。
 迂闊者の私は同じ失敗を2度繰り返さないために、失敗を忘れない様にしてきました。サラリーマン時代はそれで良かったのですが、職を辞して10年以上経つのに,、
忘れない様にしていた失敗の記憶がたまに蘇るのです。これはかなり辛く、失敗したくないために失敗の記憶を残したのは、本当に良かったのだろうかと悩んでしまいます。
 でもまあ、ものは考え様。手柄話だけ覚えていて同じ事ばかり話して『年寄りの繰言』と言われるよりは、失敗談で笑われる方が幸せかもしれません。