乾いた雑巾を絞った日本企業。

 日本の代表的産業である自動車産業が合理化策として始めたのが『ジャストインタイム方式』である。自動車産業の実情は様々な下請け工場で作ったパーツを組み上げる様なものである。
 ジャストインタイム方式はそれら下請工場が自動車産業の生産に合わせてパーツを入荷する様にしたやり方である。これにより、自動車産業は在庫を抱える必要がなくなり、世界で渡り合える競争力をつけた。
 
 ジャストインタイム方式は自動車産業にとっては有効な合理化策ではあったが、結果としてそのしわ寄せは下請けがかぶる事となった。自動車産業の生産目標が拡大すれば下請工場は寝る間もないほどに働き、縮小すれば社員の給料を支払うのも困難になる。
 それだけではない。ジャストインタイム方式の最大の被害者は運送業者である。自動車産業が在庫を持たないので、予定通りにパーツを運び込めなければペナルティーを科せられる。
 自動車輸送なんて道路状況で目標通りに着けるとは限らない。たとえ道路状況であっても入庫が遅れれば自動車の生産ラインが止まる事もありうる。だからペナルティーを課すのだが、それが半端じゃあない。運転手の1日の収入の数日分になる金額が要求されるのだ。
 
 さて、ジャストインタイム方式は合理化の成功例として大々的に喧伝(けんでん:盛んに言いはやす)されたのだが、はたしてこれが合理化と言えるだろうか。私には不都合をすべて下請け(弱者)に押し付けた失敗事例に見える。
 とはいえ、弱者は強者に向かっては文句も言えない。無理難題も頬を引きつらせた笑顔の様な仕草で受けるしかないのだ。
 
(大企業の合理化策にはこの様な下請け泣かせの事例が多い)