二輪車とはコケるもの。

 自転車では速度の上限も加速の鋭さも自転車をこぐ人の体力勝負ですが、オートバイは右手のひとひねりで事が足ります。勿論、ライダーの技量以上のスピードだってチョチョイのチョイです。
 
 初めて持ったCB350でも何回か転びました。一番ひどく転んだのが千葉県の亀山湖だったか三島湖だったかの未舗装路でした。景色に見とれて急ブレーキをかける羽目になり、前輪が滑ってコケました。右肩を脱臼しましたが、道路下に落ちていたらもっとひどかったと思います。
 その次にひどかったのが相模湖から富士山へ向かう道志道でした。未舗装道路にできていた凹みを避けようと急ハンドルでかわそうとしたらコケてお尻に大きなアザができました。
 
 怪我はしませんでしたが山道で車体ごと斜面をズリ落ちた事もあります。今も昔も当たり前ながら林道は未舗装で、山仕事のトラックが路面をコネますので、深い轍や滑りやすくなっている所があります。
 ブレーキをかけても停まらずに滑り、路面を外れて斜面をズリ落ちて3mほど下の切り株に引っかかりました。山の中ですから歩いて帰るには遠いので、とにかくCB350を林道に押し上げる方法を考えました。
 引っかかっている切り株から少し上にある切り株に、捨てられた丸太や枝などを渡したり、斜面に棒を突き刺したりしてタイヤの通る場所を作り、自分は斜面の下側に立ってエンジンとクラッチを操作しながら押し上げました。エンジンを回しすぎれば後輪がスリップして谷側に落ち込むので、四苦八苦して林道に戻した時はヘロヘロになっていました。
 
 CB350は舗装道路を走るタイプのオートバイですが、遊びに行きたい奥多摩秩父や丹沢などの道路は町を外れれば未舗装が当たり前の時代でした。また悪い事に私は主要道から分かれている林道に『どこに続いているのだろう』と入るのが好きでした。(当時の林道の入り口は今の様に鎖などで施錠されていませんでした)
 そのうち、CB350でオフロードを走るのは無理なのをさとり、車名は忘れましたがカワサキの2スト125ccのオフロードバイクに買い替えました。最初は2スト特有の低回転でのトルクの低さに戸惑いましたが、ある程度回転を上げると悪路もキビキビとよく走り山道もより深く入って行けました。
 そんな時の失敗は、下り坂で前ブレーキにばかり頼りすぎ、パンクと同時に前輪のチューブが引きちぎれて、町まで2時間以上バイクを押した事があります。ホイホイと走ってきた道が歩くとこんなに遠いとは、トホホでした。別の時には、渓流釣の人に『釣れましたか?』と声をかけられた事もありました。
 
 しかしです。子供が生まれると、乳幼児を連れて公共交通機関で女房の実家に行くのが大変で、常日頃から『俺は自動車よりオートバイが好きだ』と言っていたのに、オートバイを手放して中古の小型車を買ってしまいました。そこから長いバイクレス時代が始まったのです。(ン?まてよ?そうだったか?)