孤独死・死臭・事故部屋

 マンションなどの賃貸物件で賃貸料の異常に安い事があります。昔は不動産業者にも大家にも説明責任がありませんでしたので、前の入居者に何かあっても普通の賃貸料で貸し、事故部屋であった事は入居者の噂話から知る程度でした。
 現在は仲介の不動産業者から理由を聞けますし、賃貸料が安くても死人の出た部屋に住みたくなければ契約をしなくて済みます。
 
 人が死ぬと肉体は直ぐに腐敗が始まります。特に、細菌類の多い腸は普段でも醗酵腐敗しているので、蠕動運動の無くなった腸は醗酵腐敗ガスが屁として放出されずに腹部を膨満させ、1週間もしないうちに醗酵腐敗物が肛門から流れ出したり、腐った腹壁が破けて流れ出します。
 醗酵腐敗液は布団にしみ込み、畳や床にしみ込み、土台や床下の土にもしみ込みます。リフォームしても、時に床下の土にしみ込んだ醗酵腐敗液は長い間に渡って死臭を漂わせる事があります。
 
 噂話ですが、漫画家の松本零士は南米で拾ってきた小さな壷が気に入り寝室に置いたそうですが、悪夢を見る様になったそうです。ある日、南米の壷からかすかに死臭が漂うので寝室から出したといいます。
 私の病院へ行く道で今年ひき逃げがありました。血は洗い流されましたが、血の流れた部分はいつになってもアスファルトの色が違うのです。そのシミが判らなくなるまでに約半年かかりました。
 松本零士の壷も、ひき逃げ現場のシミも、たぶん脂肪分が染み込んで死臭を発したりシミになっていたのでしょう。
 孤独死にはその様なリスクがあり、社会的に大きな問題なのです。
 
 マザーテレサはインドの貧民窟の路上で野たれ死ぬ人に最後の安らぎを与えようとの信念で、多くの弟子や賛同者を得てノーベル平和賞も受けました。世界第3位の経済大国の日本で誰にも看取られずに死んで行くというのをマザーテレサが聞いたら何と言うでしょうか。
 豊かさの香が死臭だとしたら、日本は何と心貧しき国なのでしょう。孤独死を減らしましょう。そして、長期間放置される遺体をゼロにしましょう。