情けない革命家もどき。

 70年代には大学紛争にみるまでもなく、社会の価値観の変革と変化が起こった。私見ではあるが、学生運動は中国の文化大革命に触発された気がする。高卒で働き始めたため、あくまでも大学生を横目に見ての偏見だけど。
 社会の変革は、経済的発展により日本の国際的地位が向上し、国内的にはバブルにいたる好景気のきざしで労働者階級が豊かになり発言権を得た事だと思う。
 
 その頃、共産党は革命で日本の政治変革をめざし、社会党は選挙による与野党交代で社会主義国家を目指した。末端の労働者もいっぱしの革命家気取りで、ガード下の赤提灯で会社や社会の不公平をネタにオダを上げたものだった。
 いわく『資本家を倒せ』だの『資本家の手先の自民党を倒せ』だの様々な事に不満をぶつけ、赤提灯のノレンの中では、今すぐにでも日本転覆が果たせそうな勢いだった。
 
 酒と言葉に酔ってバランスを崩した先輩が転んで左の手の平を切り、アルコールで血の巡りがよくなっていたためか、酔眼にはかなりの出血の様に見えた。先輩も『救急車を呼べ~、救急車~。』と右手で左の手首を押さえて騒いだ。
 店主が切った左手を洗ってくれて、晒しの手ぬぐいで手をしばり『ここじゃあ救急車も入って来れないから表通りの交番で呼んでもらった方がいい。』と言うので、表通りに出たが『革命だ。国家転覆だ。』と騒いだ後なので交番には行きづらかった。
 
 結局、その夜は血をみてしょぼくれてお開きとなった。翌日、先輩は包帯で左手をグルグル巻きにして出勤したが、病院には行かなかったと言う。半月ほどたって傷跡を見せてもらったら深さは判らないが切り口は2cm位だった。
 現体制を革命で転覆させようと言う者が現政権下で現体制の救急車を呼ぼうなんて、何を甘ったれていたのだろう。それじゃあ、革命なんて無理ジャン!!。
 
 そう言えば映画にもなった連合赤軍事件も革命には程遠く、革命ごっこ仲間の愛憎による粛清ごっこみたいだった。革命という反論できない目標で口を塞ぎ、自己批判させ、仲間を殺していった。その後に起きた『オウム真理教事件』も反論の口を塞いで殺していく所にも共通点があるな。
 他の価値観を認めないという集団心理は恐ろしいものである。だが、群れて生きてきた人間には、生まれながらに組織維持のためのそういう習性がある様な気がする。
 
 『少数意見の尊重』という理想も『多数決の原則』の前では風の中の蝋燭の灯ほどの力も無く、人間は烏合の衆となって奈落の底に突き進む。(それじゃあレミングスと同じじゃあないか)