菅の時間をかけた退陣は良い判断だった。

 私は5月17日のブログ『福島では失敗したが、浜岡は大丈夫。』の中で「無線仲間には『初めての故障は誰もが初心者』という言葉がある」と書きました。今回の東日本大震災地震も、福島第一原発の事故も、まさにその通りで日本国民すべてが未経験の出来事でした。
 
 こんな時は前例で対処できないから、誰がトップであってもほとんど同じ事しか出来ません。要するに判明した事実に対する対処療法しか出来ないのです。そんな時に内閣不信任案を出した自民党公明党は、国民不在の党利党略しか考えていなかったと言えます。 内閣不信任になればとるべき道は2つしかありません。解散か総辞職です。もし、震災直後に解散したら噴飯ものの椿事ですし、総辞職していたら短命内閣が生まれ続けるだけで、震災対応は今ほど進んでいなかったでしょう。
 
 私は声を大にして叫びたい『首相の退陣を匂わせた政治判断は最高だった』と。
 もう一つ叫びたい『小沢の身内からの不信任案同調は最悪の愚策だった』と。
 もし内閣不信任になっていたら、選択肢は解散か総辞職だけで政治的混乱が増し、震災対応には何も利するところが無いだけでなく、党員権限剥奪中の小沢は政治責任も取らずに逃げていたと思う。あれは単なる『菅憎し』の個人感情による行動だったと私は断定する。
 
 そして、退陣を引き伸ばす事による利点は政治的にも現れました。『菅憎し』の雰囲気が与野党を問わず国会中に広がった事で、これにより攻撃目標が民主党から『菅』個人に向けられました。それにより、民主党の崩壊はまぬがれたのです。
 震災直後の錯綜する情報の中では、誤指示や誤判断の生じるのは当たり前です。それらすべてがワカランチンの『菅』のせいであれば、次の首相がそれについて辞任するほどの責任追及はされないでしょう。すなわち『菅』は震災復興が実務処理に移行するのを待っていたのです。
 
 私が一番驚いたのは自民党公明党が国民の事を考えるのに3ヶ月もかかった事です。政治力学的にそれは理解できます。民主党に協力してよい震災対策を作っても、手柄はほとんどが民主党のものになってしまいます。そこで、与党転覆に動いたのですが、その愚かしさに気付いたのはワカランチンの『菅』がなかなか辞任しないと判ってからでした。
 もし、早々に『菅』が辞任していたら、震災救済の遅延が自民党公明党にあると気付かずに、同じ手法で次々と首相攻撃を続けたでしょう。
 人間とは愚かなものです。1度成功した手法は効果が無くなるまで使い続けるものなのです。