日本の国会は猿芝居。

福島原発事故「多くが人災」=原子力専門委員が指摘
 原子力委員会青山繁晴専門委員は13日の参院予算委員会参考人として出席し、東京電力福島第1原発事故について『津波の直撃を受けた段階では、原子炉建屋はまだしっかりとしていたが、その後の判断ミス、対応の遅れによって水素爆発が起き、放射性物質が漏えいした。全てではないが多くのものが人災だ』との見解を示した。自民党衛藤晟一氏への答弁。
 青山氏は4月下旬に福島第1原発を視察し、吉田昌郎所長らから聞き取り調査を行った。菅直人首相が東日本大震災発生翌日の3月12日に原発を視察したことに関し、青山氏は格納容器から気体を放出するベントの指示の9分前に首相視察に関する指示が東電本社から現場にあったと説明。『(ベント)作業に加えて首相を迎える準備が必要だったことは間違いない』と述べた。
時事通信 5月13日(金)20時14分配信)
 
 時々NHKの国会中継を見るが、政党間の足の引っ張り合いばかりをやっていて腹立たしい。5月13日にも自民党議員が、3月12日に菅首相福島第一原発を視察した事でベントを開けるチャンスを失いメルトダウンしたと両天秤の結果論で政府を攻撃していた。
 もし、菅首相が視察せずにベントを開いていたら、その自民党議員は『被害の状況も判らずにベントを開いて多量の放射性物質を飛散させた』と言っているだろうし『早急に菅総理は福島第1原発を視察すべきだった』などと吼えていたかもしれない。
 あの時点で、ベント開放がどれだけ恐ろしい行為なのか原子力委員会青山繁晴専門委員は本当に判っているのだろうか。また、青山にあの時点でベント開放の命令を出す勇気はあっただろうか。
(そう聞いたら多分、それは私の判断すべき事項でないと逃げるだろう)
 
 あの時点では、原子炉内の圧力が上がっていて冷却水の注入が困難だった。ベントを開けて炉内の圧力を下げれば注水はできる様になる。だが、高温の物質に水をかければ水蒸気爆発を起こして原子炉自体が吹き飛んでいたかもしれない。水蒸気爆発しなくてもベント開放中は大量の放射性物質が炉内から放出されただろう。
 水蒸気爆発とは恐ろしいもので、チェルノブイリ原発の建物を吹き飛ばしたのも水蒸気爆発だし、会津磐梯山が今の形になったのも水蒸気爆発で山体のほとんどが吹き飛んだからだ。
 
 あの時点でベントを開けて上から注水していたら、3千度近くで発熱する10トンを越す核燃料に触れた瞬時に水は数百度の蒸気となり、落ちてくる水さえも沸騰蒸発させて水蒸気爆発を起こしただろう。高温の物体を水で冷却するのは難しいのだ。
 常識的に考えれば、その様な場合は一気に水をかけるのではなく、下からゆっくりと水に触れさせて上方に蒸気を逃がしながら、徐々に下方から上方に向かって水を増やさなければならない。原子炉は下部からゆっくりと冷却水面を上昇させられる構造になっているのだろうか。それならば水蒸気爆発させずにメルトダウンを防げただろうが、それでも沸騰して急上昇する高温水蒸気の勢いで多量の放射性物質がベントから放出されただろう。
 
 今は結果論でものを言うのはやめにして、起きてしまった事の被害を最小にする方法を考えるのが、原因探しや犯人探しより先だろう。
 ただ、一言いわせてもらえるなら、今回の原発事故で抜けていたのは『悲観的に考えて楽観的に対処する』という技術者の基本を忘れた事だ。最初からメルトダウンありきで対策を考えるべきだった。
 悲観的に考えればテクノロジーでの対応を考えるが、楽観的に考えたからテクニックで切り抜けようとし、対処しきれなくなった気がする。もしかすると、東電の腹には(できれば再稼動したい)との思惑があったかもしれない。
 
 ところで、東日本大震災からもう2ヶ月以上過ぎているのに、被災者には先の見えない生活が続き、国会では猿どもが被害者不在の原因探しと犯人探しで足の引っ張り合いをしている。情けないが現在の国会中継を見れば、我々の選んだ選良は我々の事など考えていないのがよく判る。国会議員は自分が当選するために知恵をしぼり、当選するためだけの人生しか経験していないのだ。場合によっては市井の人々の常識よりも乏しい経験しか無いのだ。