世相が安定しても個人の心は不安定。

 東北関東大震災に国は強力な復興政策をとり、社会的インフラは数年で整うと思う。だが、1軒1軒の家庭あるいは個人の心が平静に戻るには時間がかかる。
 低利子や無利子のお金を借りたとしても、借金は借金。いずれは返さなければならない。だが、生活の安定なしには借金も返せないし、心の安定なしには生活も安定しない。何より、災害で受けた心の傷は個々人により影響が異なる。妻子を亡くしても再婚して立ち直っていく人もいるだろうが、妻子を忘れられなくてアルコールに溺れる人もいるだろう。
 今後、町を復興するには立ち退きを余儀なくされる人もいるだろう。残る人も、立ち退く人もそれが原因で生活が狂うかもしれない。どんなに震災復興のために国が力を尽くしても、完全に地震の前の生活が戻ってくるわけではないのだ。
 私も多くの人の生活を狂わす様な大火災に遭った事がある。着の身着のままで逃げ、すべてが焼けてしまった。人によっては早々に家を建て直し商売を元に戻そうとする人もいたが、茫然自失で仕事の意欲も生きて行く自信も信念も無くしてしまった人もいた。
 体の怪我でも治りの早い人も遅い人もいる様に、心の傷にも治りの差がある。怪我が治れば以前と変わらない事もあれば、動かすたびに鈍痛を感じる様になる事もある。あるいは以前とは姿形が変わってしまう事もある様に、人によっては人格の変わってしまう事もあり、時には『死にそこない気分』をズ~と引きずって生きる人もできてしまう。