『通信の秘密』は無線屋の常識。

 光と同じ速度で伝播する電波は遠距離通信に不可欠ではあるが、理論的に四方八方に広がる電波は誰もがその通信を傍受できるという性質を備えている。ゆえに電波法では傍受した通信の秘密を漏らしてはならないと定めている。
 電波法の『通信の秘密』の考え方は、郵便法の『信書の秘密』と同じ精神である。郵便は不特定多数の信書をあて先に配達するが、封書を開封して読む事を禁じている。葉書は読む事は可能だが、その内容を漏らす事は禁じている。
 
 ネット時代になって卒論をコピペで作ってしまう不逞の輩もいるみたいだが、ネットに公開されている情報であっても原則的には著作権の対象になるので、著者に断りなく自分の発想のごとくに使用すれば著作権の侵害になる。
 ただし、ブログのコメントや掲示板の書き込みに著作権は存在しない。Yahoo のブログはコメントを書いた人にも削除できる仕様になっているが、本質的にコメントの削除権はブログの管理人にあり、書き込んだ人は著作権を放棄したと考えるのが妥当だろう。
 これも郵便法の精神を援用して考えると、コメントはブログの管理人宛ての手紙と考えてよいだろう。ポストに投函された手紙は差出人に不都合が生じても、郵便事業者は手紙を返さない。配達するのが原則である。
 また、配達された手紙をどうするかは手紙を受け取った者の自由裁量であり、原則的に手紙の差出人には所有権も著作権も無い。
 
 法整備が整っていない新技術に対処するには、現行の法律の精神を援用するのが妥当だ。Yahoo のブログに限って言えば誰もが読める普通のコメントは葉書に相当するだろうし、『内緒』をクリックしたコメントは封書に相当すると考えてよいだろう。
 例えば郵便配達人が、自分が横恋慕する女性宛の葉書を読んで腹を立て、差出人に嫌がらせの手紙を出したとしたら、それは『信書の秘密』を侵した事になる。あるいは、通行人が個人のポストに届いた葉書を読んで、差出人に嫌がらせの手紙を出す事は脅迫や強要や名誉毀損に相当する犯罪行為である。
 
 ネットは新しいコミュニケーション手段なので、一部の利用者に通信や信書の根本原則を理解していない者がいる。すなわち、誰かのブログに書き込まれたコメントが気に入らないと、そのコメントを書き込んだ人のブログに行って、嫌がらせのコメントを書くのだが、よ~く考えてみると、それはネットでも犯罪行為と断定できる。
 ネットでコメントを書く時には、書き込みの取り扱いが管理人の自由裁量である事を思い出し、自戒を込めて『削除されたり恥をかかない様に』と肝に銘じる事にしよう。