首長はカジノを欲しがる。

 かなり以前、石原東京都知事が税収と雇用促進のためにと、カジノ構想を述べた事がある。今度は橋下大阪府知事が大阪湾に島を作ってカジノにしようと喚き始めた。愚かしさの連鎖とでも言うべきなのだろうか、虫酸の走る発想である。
 確かに、カジノで税収も雇用促進もできるではあろうが、カジノによる社会的弊害には目をつむれと言うのだろうか。日本では過度な射幸心を煽るのは道徳的に良くないという風潮がある。それは、日本人の美徳として世界に誇るべき事なのに、選良として選ばれた首長が射幸心をあおるカジノを推進するのは本末転倒なのではないだろうか。
 石原も治安が悪くならない様に警察との連携を高めるなどと言ってはいたが、ジワジワと浸透する道徳心の低下や射幸心による労働意欲の低下などには一言も触れていない。私は社会的モラルの低下に気がかかるのだが、首長にはどうもそれは無いらしい。
 一番困るのは、一度許可したものには既得権が生じて閉鎖をするのが困難という社会的慣習の存在する事である。たとえば、現在は遊戯とされているパチンコだが、これを禁止しようとしたら、政府はパチンコ店だけでなくパチンコ製造業やパチンコにのめり込んでいる者からも轟々たる非難を浴びるだろう。
 私は国会議員にまでカジノ待望論が広がらない事を祈っている。選良とは、選ばれし良き人物のはずだから、良心に恥じる様な行いや、反道徳的な行いをしてはならないと思う。カジノを欲しがる首長はほかにもいるが、石原にしろ橋下にしろ知名度の高い首長なだけに、その道徳観念と人間性の低さがひどく哀しい。