秋の落葉松。

 落葉松は読んで字のごとく松の仲間だが、秋には紅葉して葉を落とす。
 私は色の表現が苦手なので落葉松の紅葉した色を上手く表現できない。そう、レンガ色の明るいやつ。アッ、カーキ色だ。赤や黄色と違って目を引く色ではないが、葉の散り方には風情がある。
 緑の時は大きな1枚の葉に見えるが、本当の葉は幅1mmくらいで長さは1~2cmくらいのが平たく寄り集まっている。それが1枚1枚バラバラに散り、まるで雪の降る様に静かに舞い降りてくる。秋に落葉松林を歩くと、知らず知らずに髪の毛や洋服の肩に静かに止まる。
 旅館に入る時は、肩に留まった薄茶色の小葉を払うのも雪に似ている。肩は気付くが髪の毛となるとあまりにも静かに止まるので気付かない。部屋に入ってお茶をすすろうと、ヒョイと前かがみになると机にひらひらと落ちて、頭にも付いていた事に気付く。
 雪の降る様に散るから、落葉松林の逍遥もまた静かなものである。広葉樹の落ち葉の様に踏んでも音がしない。しかし、降り積もった落葉松の落ち葉はまるで高級な絨毯の様な弾力で足を支えてくれる。厚く積もった落葉松の落ち葉は保水性も良い。
 赤松林には松茸だが、落葉松林には山鳥茸などの生えている事がある。沢山見つけた時にはハンカチの4隅を結んで茸を傷めない様に持って帰り、宿の人に渡すと食べられる茸を選び出してキノコ汁を作ってくれる事がある。
(haluka様のブログ『ロナウド物語』からの思い出)