所詮、絵空事のたぐい。

  小説にしても、映画にしても、しょせん作り物は作り物。どんなにリアルを追及したところで現実ではない。私は、人を仮想世界へいざなうには、それなりの手順が必要だと考えています。
 
  私は軍国少年ではなく、戦後教育を受けたアプレです。漫画は手塚治虫世代ですし、私の一番好きな手塚作品は『ロック冒険記』です。
  しかし、物語へのいざないで一番好きなのは『リボンの騎士』の冒頭の1ページです。そのページが下の写真です。
 
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  幼少期の我が家は漫画を買える経済状態ではなく、いつも貸本屋で読んでいました。いろいろな漫画を探していた時、手にしたのが『リボンの騎士』でした。
  表題に騎士と書かれていたので少年向け漫画かと思って手にしたら少女向け漫画である事がすぐに判りましたが、一応開いてみて冒頭のこのページに目が釘付けになりました。
  ゼンマイが巻かれた人形がおとぎ話をはじめる。少年向け漫画にはない展開でした。お金がもったいないので、借りて読みはしませんでしたが、そんなものが一生記憶に残るとは、その時は考えてもいませんでした。
 
  そして中年になってレーザーディスクを買って、ティムバートン監督の『シザーハンズ』を観た時に、突然『リボンの騎士』の記憶がよみがえりました。
  シザーハンズも映画の冒頭で屋根の色がカラフルな町並みを映し出します。ティムバートン監督が(これは作り物だよ!思う存分に楽しんでね!!)と語りかけているのを感じたのです。
 
  私が『リボンの騎士』で感じたのを、ティムバートン監督は『シザーハンズ』や『ビッグフィッシュ』でやり、物語にいざなわれる気持ち良さを演出したのだと思います。
  そして最近、とうとうヤフーオークションで復刻版ですが『リボンの騎士』を買ってしまいました。(たった1ページのために!馬鹿ですね~!!)