50代でフリーター?!。

  私も15年前に55歳で早期退社した。バブルが崩壊していたので職安に行っても求人なんて無かった。退職金を取り崩して生活するのだが、収入のある生活から無収入の生活になっても、急には生活を切りつめられなかった。徐々に節約する生活をしながら、約1年かけて無収入の生活方法を考えた。
  まず支出を管理しやすい様に、カードは1枚だけ残し他は解約した。そして、出金口座を1つにしようと決めた。うちの場合は郵貯銀行を出金口座とした。何よりも店舗数が多いし、家から一番近かった。
  そして、毎年4月1日頃に郵貯銀行の口座に300万円のお金を入れ、すべての生活費をそこから出す様にした。幸いな事に、冠婚葬祭や大病にならなかったので、大きなお金の出て行く事がなく、300万円で生活できた。年金をもらう様になってからは、年金を受け取る口座は郵貯銀行とは別にして、収入と支出の口座を分けた上、1年間は手を付けない様にした。
 
  そして今年、友人の息子さんがやはり50代で早期退社したのを知った。一流大学を出て一流企業に入り、何年もアメリカに行くほど優秀な経歴を持ちながら、今はまだ再就職できていないという。
  私とその息子さんの違うところは子供の年齢である。私の場合、55歳の時すでに子供は大学を卒業していたが、その息子さんのお子さんはまだ高校生なのだ。
  日本の結婚事情が晩婚化する事で、親と子の年齢が開き、それこそ65歳まで働かなければ子供が大学を卒業できない年齢構成になってしまった。
 
  いったい、誰がこんな日本にしたのだ。安い労働力を求めて農村から中卒者を『金の玉子』と呼んもてはやし都市に集中させ、核家族化を進めた。
  中卒者のほとんどが高校に行く様になると『三チャン農業(爺チャン・婆チャン・母チャン)』といって、農閑期の農村から男をかり集めた。
  それが行き詰ると今度は都市の主婦を労働力として家から引き剥がした。そして、その子供達は男も女も大学を出ると就職するのが当たり前になり、結婚年齢が高くなるという晩婚化が起こった。
  その時々に安い労働力をあの手この手でかき集め、国民すべてが中流と信じる経済大国となったが、それもバブルがはじけるまでの間に過ぎなかった。バブル崩壊後はリストラの嵐と、派遣社員の制度がどんどん強化されて貧困層が増大した。
 
  今の労働情勢は派遣労働が増える事で、経験豊富な社員が激減した。さらに、教育の機会均等も掛け声ばかりで、その実態は貧富の格差による教育格差の時代になってしまった。
  これらはすべて豊かな者達の利益をむさぼる思惑から生じたのではないだろうか。安倍が1億ナンチャラカンチャラと言っているが、彼の本心は貧富の格差拡大なのではないだろうか。
  貧富の格差が広がれば兵隊になる者が増えるのがこの世の鉄則なのだ。
 
  もう50年くらい前になるが、アメリカはベトナム戦争の泥沼にはまっていた。当時は徴兵制だったから兵隊には事欠かないはずだったのだが、多くの戦死者が出るにしたがいアメリカの豊かな階層から文句が出た。
  そしてアメリカは志願制になった。そして志願制によりアメリカの兵隊は貧しい階層の子供が多くなった。
 
  友人の息子さんの事から、話がとんでもない方向に行ってしまったが、私が若くてデモの先頭で歩いた
頃には、横断幕には『労働力の再生産できる賃金をよこせ』と書かれていた。
  『労働力の再生産できる賃金』とは、結婚して少なくとも2人の子供を育てられる金をよこせという事だったのである。友人の息子さんの世代は、まだ終身雇用の尻尾で、男女共に豊かな時代だった。ゆえに若い人生を楽しんだので晩婚化の世相になり、下手をすると50代での早期退社は未成年の子供を抱えた厳しい生活になってしまう。
 
  安倍がなんと言おうと今の日本は『一人っ子政策』で失敗した中国によく似ているし、安倍が定年を65歳にすると言ったところで、企業は企業の思惑で首を切り、再就職できなければ教育貧乏になってしまう。
  日本の政財界は常に安い労働力を探し続けた。その結果、すべての労働力は刈り取られてしまった。今は、政治家こそ『労働力の再生産』を考えなければならない。
  そのためには、安い労働力を駆り集めて企業が蓄積するのではなく、富の公平化を行わなければならない。それこそ『労働力の再生産できる賃金をよこせ』である。