憲法を改正したらアメリカは日本を守るのか。

 結論から言えば、アメリカは日本を守らない。安保条約があるからアメリカには日本を守る義務があると考えるのは軍事楽天家である。
 その答えは、安保条約は日本が戦争になった時の条約なのである。戦争とは宣戦布告がなされて始まるのであり、単なる軍事衝突は戦争でなく紛争である。すなわち、戦争状態であっても紛争に安保条約は発動しないから、アメリカは日本のために軍事力を行使しない。
 
 それでは、日本が戦争になる事はあるだろうか。北朝鮮だろうと、中国だろうと、その他の極東の国家であろうと日本に宣戦布告する事はない。なぜならば、極東には北朝鮮という火薬庫がある。そのためアメリカは極東に強大な軍事力を展開している。
 すなわち、極東ではアメリカが銃口北朝鮮に向けている状態なのだ。そんな中で中国が日本に宣戦布告すれば、その銃口は直ぐ中国に向けられる。
 それだけではない。中国が日本に宣戦布告したら、ロシアも銃口を中国に向けるだろう。もし、中国が核ミサイルを発射すれば、国境線を接する周辺各国から中国に向けて核ミサイルが打ち込まれるだろう。
 たとえ中国がいかなる国と軍事協定を結んでいても、それらの協定国に相談も無しに宣戦布告すればそうなる。
 という事は、宣戦布告前にはかなり長い間の宣伝戦と紛争により、戦争をする相手国を世界中に限定してみせる必要がある。そして、世界がグローバルウォーの危機を感じれば仲裁が入る。そんな世界の仲裁を踏み倒して宣戦布告する事などありえない。
 
 改憲派は『安保条約があっても現憲法ではアメリカ軍が攻撃されても自衛隊は支援も援護もできない』さらに続けて『自衛隊アメリカ軍への攻撃を見過ごせばその時点で安保条約は反故となる』と喧伝(けんでん)する。
 だが、本質的にそんな事はありえない。『自衛隊もその戦いに参戦する』と明文化されていないだけである。すなわち、アメリカの艦船などが自衛隊の目の前で攻撃されれば自衛隊は共通の敵に反撃するのである。
 それだけではない。これも明文化されていないが、安保条約に基づきアメリカが参戦した場合は、自衛隊アメリカ軍の指揮下に入るのである。
 これらの事は明文化されないが、軍事というものは秘密であるから抑止効果があるのであって、重要事項はすべて軍事機密として公にされる事は無い。
 
 改憲派は『外国脅威説』を流して『憲法改正の正当性』を説こうとするが、憲法に違反する『自衛隊という軍隊』を憲法解釈という形ですでに持ってしまったし、海外派兵についてもPKOで実績も作った。
 それならば、外国の脅威や安保条約の不備を持ち出してまで憲法改正をやらなくてもよいはずである。それでも憲法改正を押し進めようとするのは、海外脅威や安保条約とは無関係の意図である事は間違いない。
 
(腹の中にあるのは貧乏人に不利益な思惑なのである)