33人。69日目の救出おめでとう。

 8月5日にチリのサンホセ鉱山で落盤事故が発生し、33人が約700mの地下に閉じ込められた。救出のために地上で様々な方策を講じた結果、10月13日に全員が救出された。極限状態からの救出という事件ではアポロ13号もそうだった。
 地下と宇宙という正反対の状況ではあるが、閉じ込められた当事者達にはほとんど何もできない。そして、外の人々が力を合わせて知恵を絞り救出の努力を不眠不休で行ったのは同じだった。
 もう一つ同じなのは、世界中の人々が救出の無事を願ってニュースを見たし、救出が成功した時には世界中が喜んだ。
 しかし、よく考えてみるとアポロはたった3人であり、今回の事故もたった33人でしかない。この程度の人数はイラク自爆テロでも、アフガニスタン誤爆でも死んでいる。いっその事、アポロは宇宙に捨ててしまえばよかったし、チリでも坑道を掘り進んで時間切れで殺してしまってもよかっただったろう。そして、献花でもして哀悼の意をあらわせば済んだかもしれない。
 数人を救出する事に感激し、大勢の人間の死には何も感じない。なぜ同じ人間が事故の救出に感動し、戦争の死を平然と受け流すのだろうか。不条理の原因が前者は偶発的であり、後者は必然的だからだろうか。
 私的には、それが案外納得できる。同じ事故であっても、偶発的で遭遇頻度が低い場合は『かわいそう』と感じるが、危険な状況では『しかたない』と思う。交通事故でも歩道に車が突っ込んだら『かわいそう』だが、交通量の多い道路を横断していたら『しかたない』とつぶやくだろう。
 もし、これに納得したとしたら。あなたも私と同じ気まぐれで冷酷な人間です。しかし、ほとんどの人がそう感じるとしたら、それが人間なのです。