ポンユー?

 もう亡くなりましたが従兄弟に兵隊経験者がいて、満州から復員してきました。その従兄弟には満州で身に付いたいくつかの癖がありました。
 一つ目は祖母が嫌がった『貧乏ゆすり』です。でも、本当は貧乏ゆすりではなく、立っていてもしょっちゅう体を揺すっていたのです。それは夜の歩哨に立った時、直立不動だと靴底が地面に張り付いてしまうため、細かく足踏みを続けなければならないためだそうです。
 二つ目は『ポンユー』という言葉をしょっちゅう口にしました。当時はどんな意味か判らなくて、私はイカレポンチに友達のユーがくっついた、イカレポンチの友達という意味だと思っていました。後年、漢字で『朋友』と書く事を知りました。
 あとは癖ではありませんが、真冬に戦友の墓に線香を数本立てたら寒風で線香の火が消えてしまったとか、真冬に素手で戦車に触れると手が張り付いてしまうとか、家宝の日本刀を自慢していた将校が真冬に試し切りをしたらあっけなく折れてしまったとか、大半が関東地方では体感できない極寒の地の話でした。