身体髪膚これ父母に受く。

 去年の今頃だったと思うけど、横浜中華街に行く途中。中央線の進行方向右側のドアの開く中野から、ロックをやっていると思われる女性がギターを背負って乗り込んできた。
 ラッシュ時ほどではないが混み合う車内を、イライラしながら新宿で下りやすい左側のドアまで乗客をかき分けて移動してきた。そして、シャブでもやっているんじゃあないかと思えるほど落ち着かず、何かブツブツとつぶやく。
 嫌な雰囲気だったので、電車の揺れに合わせて女房を安全な位置に移動させた。さりげなく観察したら、耳から鼻から唇にまでピアスをつけている。これから舞台でもあるのか化粧もロックの化粧をしている。
 
 急に話は横道にそれるが、聖飢魔Ⅱが舞台化粧のまま電車で移動した時の話を思い出した。女性はガン見するが、男性は見てみないフリをするそうだ。
 この時もその例にもれず、安全な方に動かした女房は私の体の脇からロック女性を見ようとして首を伸ばす。オイオイそれじゃあ何かの時に守ろうとしてる俺の気持ちはどうなるんだとあきれてしまった。
 
 さて、話を元に戻すと、女性でロック舞台に立つので、奇天烈に見える化粧だが、基本的なめめつは鼻筋もとおり美形である。
 しかし、しかしである『身体髪膚これ父母に受く,あえて毀傷せざるは孝の始めなり』という言葉もある。
 ロックを選んだのは本人の意思だろうから、親とすれば顔のペイントまでは我慢するにしても、耳、鼻、唇にまで穴をあけてのピアスを悲しい思いで見ているんじゃあないかと、親の気持ちになってしまった。
 
 もし我が家で、息子がピアスをしたら『その輪かは何かぶら下げる役に立つのか?これでも掛けてみろ』と聞くかもしれない。(親子喧嘩必至のパターン!?)